【団塊ひとり】今の時点でのAIIB不参加は正しい選択だ。

 首相官邸にドローンを飛ばした男が逮捕されたが、罪状はなんと威力業務妨害罪。日本という国のおかしさがよく出ている罪状だ。「有事」に対する法整備が全くなされていない。これがロシア・中国だったら国家反逆罪・テロ実行罪などの重罪になろう。戦後日本人は「有事」を想定できないのだろう。が、福島の原発事故も「非常事態」を想定外にしたことが原因だ。

 日米2プラス2の結論に反対して、中国が「尖閣諸島が中国に属するという事実は変わらない」と主張している。ある意味で事実上の「戦争宣言」に等しい。が、多くの日本人はそれに気づかない、または気づかぬふりをするのだろう。戦後民主主義は日本人から想像力を奪い取った。「戦争反対」を呪文のように述べておれば、戦争が避けられると思う考えは実に非論理的でかえって戦争を招く危険な思想だ。

 「口が先行」する戦後の日本人と違って、アメリカやロシアやイスラムや中国人などの原理主義者は、発言したことは必ず行動に移す。かつて「悪魔の詩」を翻訳した外国人の「処刑」をイランが命じたとき、欧米は「翻訳者」を国家が守った。が、日本では翻訳者本人自身も警戒しなかったのではないか。

 その結果、1991年7月、翻訳者の筑波大学助教授の五十嵐一氏が大学のエレベーターホールで刺殺された。現場には中国製カンフーシューズの足跡が見つかった。直後に短期留学生が自国に帰国している。が、容疑者に対する捜査は、某国との関係悪化を恐れる日本政府(海部俊樹首相)の意向により打ち切られたらしい。(文藝春秋

 いま世界は第一次大戦終了後の欧州に似てきた。当時台頭してきたナチスに対して、イギリスの首相ネヴィル・チェンバレンは宥和政策をとり、ドイツに軍事力を増大させる時間的猶予を与えた。もちろん当時はそのような意志はなかったのかもしれない。が、その結果イギリスはロンドン空襲など手痛い被害を被った。が、そのイギリスが中国に対して同じような行動をとろうとしている。歴史は繰り返すのか。

 戦前の日本も、当時躍進してきた「ナチス」の勢いにだまされて同盟を結んで、国家の破滅を導いてしまった。いくら経済発展して強力な軍隊を保持していても、一つの民族を差別・抹殺をうたうような国家と連携すべきではなかった。見かけの現象にだまされて、ナチスの本質を見抜けなかった当時の政治家・マスコミの責任は重い。

 いま中国はかつてのナチスと同様に経済発展はめざましく、軍備も飛躍的に増強してアメリカを圧倒するかのようだ。が、裏面ではチベットウイグルなどに激しい弾圧を加えて、かつてのナチスと変わらない行動をとっている。同盟できる国とはとても思えない。

 AIIBは今の日本では一種の踏み絵のような役割を果たしている。つまり参加するか否かの判断が、自身の政治的主張・判断を明示するような状態になっている。政府が参加を見送ったのは正解だ。いま日本がAIIBに出資することは、中国の軍備増強に貢献することに等しいからだ。長い目で見ると、中国に対する宥和政策は、日本の首を絞めることに等しい。目先の利益に惑わされない確かな目を持つことが必要だろう。