【団塊ひとり】「天声人語」の論旨 スイス国軍と自衛隊

 1日の「天声人語」の文章がよく理解できない。書き出しは「終戦間もない1949年、日本を「太平洋のスイスに」と語った人がいる。ほかならぬ占領軍のトップ、マッカーサー元帥だ。」だ。これだけを読めば、朝日新聞が日本が「太平洋のスイス」になる事を肯定しているのか否かは定かではないが、憲法では占領軍の思想を忠実に遵守しようとしている朝日新聞だから、戦後そうであったように今も朝日新聞にとっては、マッカーサー元帥の発言は「天の声」なのだろう。

 その後「天声人語」は警察予備隊自衛隊という日本の歩んだコースを「逆コース」と断じ、安倍首相批判に到達する。このままゆけば日本に徴兵制が復活し、軍国主義化するという妄想に基づいた主張だろう。が、警察予備隊を設置したのは日本の意志ではない。朝鮮戦争の思わぬ苦戦におどろいたアメリカが急遽とったご都合主義の方策だ。ローマ気取りのアメリカは、日本をカルタゴのようにつまり、二度と独立国として立ちゆかないように考えていたはずだ。それは憲法9条にもっともよく表れている。が、朝鮮戦争でその考えを放棄せざるを得なくなった。

 朝鮮戦争が始まったのは1950年だからマッカーサーの発言はその前年だ。ともあれ、スイスは国民皆兵を国是としており、徴兵制度を採用している民主主義国家だ。それどころか各家庭には自動小銃(自動拳銃も含む)が貸与されるという徹底ぶりだ。有事の際は焦土作戦も辞さない毅然とした国家意思を表明しているのだから当然だろう。もちろんPKOへの参加に積極的であることはいうまでもない。朝日新聞の平素の主張とはおよそ正反対の国家だ。戦争を肯定し徴兵制を敷いている点で憲法9条とも全く相容れない国家だ。

 天声人語は何を主張したいのか。マッカーサー元帥の言葉通り日本をスイスのような国にすべきというのか。そのためには徴兵制や国民皆兵もヤムを得ない、PKO参加は当然だと主張したいのか。が、今までの朝日新聞の主張からはとてもそうは思えない。まさか「天声人語」は朝日新聞の鬼っ子という訳でもあるまい。

 「天声人語」は次の言葉で結ばれている。「日本が直接戦争に加わらずにすんだのは憲法9条の存在が大きい。自衛隊が「普通の軍隊」だったらどうだったかと、ふと思ってみる。」だ。「普通の軍隊」とはどのような軍隊なのか。具体的にはどこの国の軍隊が「普通」なのか。アメリカ?ロシア?中国?北朝鮮?それとも・・・・。「天声人語」の発言は思わせぶりで、謎かけのようで、本音が見えているようで簡単には理解できない。それとも、私の粗雑な頭では彼らの発する「天の声」を理解できないだけのだろうか