【団塊ひとり】「可愛い花」ザ・ピーナツの音楽

団塊ひとり】「可愛い花」ザ・ピーナツの音楽
 父が音楽好きだったおかげで、私も小さい頃からいろいろな音楽を聴いていた。全く覚えてはいないのだが、幼稚園に行く前の私のお好みの曲は、李香蘭山口淑子)の「夜来香」だったそうだ。団塊一期生の幼年時代だから、もちろんレコードは78回転のSPである。

 当時は蓄音機と呼ばれていた機器にレコードを置き、聴くのであるが、家にある蓄音機はあまり上等のものではなかったのか、動くブリキ人形みたいに手でネジを回さなければ動かない代物だった。たぶん巻いた分量だけ、機械仕掛けで音楽が鳴る仕組みになっていたのだろう。だから小さい私は扱うことが出来ない。何度も、親の手を煩わせて親を困らせていたらしい。

 家にあるレコードはほとんどがクラッシックだった。今でも覚えているがベートーベンの第九は、ワインガルトナー指揮で、確か10枚近くある代物だった。片面が10分以内で終了するため、常にレコード盤をひっくり返した記憶がある。が、今から思えば貴重なレコードもあり、「ボレロ」などは作曲者自身の指揮だったと記憶している。「運命」や「新世界」の指揮者は、記憶に間違いが無ければR・シュトラウスだった。

 やがてLPの時代が訪れ、中学校になって初めて自分で購入したレコードが、ベートーベンの「田園」であり、ポピュラーではザ・ピーナッツだった。最初のピーナッツのレコードは1959年発売の「可愛いピーナッツ」というタイトルの25センチのLP盤(モノラル)だった。定価1000円とある。
それから引退するまでピーナッツの歌声に魅了されていた。生活に追われながらも金を貯めては30センチのレコードを購入し、それらは今も大切に持っている。

 ピーナッツはデビュー曲の「可愛い花」や「ウナ・セラ・ディ東京」「恋のバカンス」「恋のフーガ
など多くのヒット作を持っているが、私は、あまりヒットしなかった「愛は永遠に」という曲が大好きだった。(岩谷時子・作詞 宮川泰・作曲)ピーナッツの清純な歌声が、歌の世界にぴったりで大好きだった。

あの空の向こうには 恋人の森が
愛しては 愛された 光る思い出が
旅行く日の さみしさ 忘れさせた恋
覚えていて? ふたりの初めてのくちづけ
あの夜に燃えた頬 夕焼けが赤いよ

この鉱山の夜明けには 生きる歓びが
あの人と向き合えば あふれる言葉が
草を巻いた指輪を 交わしあった恋
覚えていて? 涙はわけあう愛の約束
泣かないでとこしえに この空は青いよ

 今から思えば、かなり少女趣味がすぎるような気がするが、当時の私はこの曲をくり返し聞いていた。今のようにリピート機能など無い時代であるから、曲が終わるたびにレコード針でレコードを傷つけぬように、手でそっと曲の始めに移動することを繰り返した。今の若い人には何の事かわからないだろう楽しみ方だ。

 「愛は永遠に」という曲では「草を巻いた指輪」という言葉が大好きで、そのような恋にあこがれていた。が、現実は厳しい。当時、秘めていた私の「初恋」はもろくも崩れ、大人になった私は結局「見合い」の末、結婚した。結婚式の時に交わした「指輪」は、結局一度もはめず、今どこにあるかさえわからない。何が「愛は永遠に」だ。

 最近昭和40年前後の歌手の曲を聴くようになった。特にビートルズもピーナッツも私には、今もなおリアルタイムの音楽だ。世間からは、ずれているのかも知れないが、ピーナッツはこれからも私の中で永遠に生き続ける。