【団塊ひとり】女子受験生、センター問題冊子持ち出し失格 後味の悪さはなんだ

  基本的な監督業務すら怠った監督者、犯罪であることを意識せず?結果として受験資格を失った受験生。やりきれないと同時に、なんとも間のぬけた事件のようにも思われる。

(前略)センターなどによると、受験生は19日の試験開始から約30分後の午前10時過ぎ、「退室したい」と監督者に伝えて退室。同大の門近くで待ち合わせていた予備校関係者に問題冊子を渡した。
 監督者は退室の数分後、机の上に問題冊子がないことに気づき、間もなく受験生を学内の自習室で見つけて問いただしたが、冊子を渡した相手を言わなかったため、警察に通報した。
 長崎県警の調べでは、この受験生は試験中の問題持ち出しが不正になるとは認識していなかった。依頼した予備校関係者は受験生が不正に持ち出すとは思っていなかったが、「生徒の自己採点用に少しでも早く答案を作りたかった」と話しているという。県警は事件性は薄いとみて、窃盗容疑などでの立件はしない方針。
 受験生が途中退室する際、監督者は理由を尋ね、問題冊子を机に置かせなければならない。受験生が試験室から出た場合は係員が試験終了時間まで付き添うこととされている。(後略・読売新聞)

 県警は事件性がないとして立件はしないようだ。しかし、問題は予備校関係者が「生徒の自己採点用に少しでも早く答案を作りたかった」と語っていることだ。この発言は私には多少不可解にうつる。
不正と認識していなければ受験生はなぜ相手の名前を述べることに躊躇したのか。また、予備校は受験生が不正に持ち出すとは思っていなかったというが、この発言は「持ち出し」が「不正」であることを認識した発現だ。では、なぜ受け取る時に注意しなかったのか。試験が終了すれば問題用紙の持ち帰りは許可されている、なぜ待てなかったのか。それとも試験時間内に入手する理由でもあったのか。

 さて、今回のケースから離れていろいろと、あらゆる「可能性」を妄想してみたい。 
まずセンター試験の自己採点のもつ意味である。普通は遅くても次の朝刊には入試センターから問題と解答と配点が発表される。その翌日(たいていは月曜日)には全国の大手予備校が各高校における受験生個人の自己採点結果を回収集計し、早ければ数日後には各予備校が算出した大学ごとの合格基準点が発表され、受験生個人や高校の進路指導部に詳細な資料が配布されてくる。受験生と学校はそれを参考にして受験校決定の判断資料にする。これが一般ではなかろうか。センター入試の結果を合格判定の基準にするときは、自己の得点だけではなく母集団の数、そこから割り出された仮の平均点・偏差値およびそれらを基準にして想定される入試動向などが必要だ。だから今の時点での自己採点を急ぐ理由は理解できない。。

 ところで2011年に天下の京都大学でインターネット掲示板の「ヤフー知恵袋」を利用したカンニングが発生したことを覚えているだろうか。中国や南朝鮮では大量の検挙者が出るほど深刻な事態になっているが、それが日本にも飛び火したような事件だった。

 事件内容は私のような知識のない人間には、とても考え付かないような手口だった。試験中に携帯電話などで、問題文を「ヤフー知恵袋」というインターネット掲示板に送信し、誰かに回答を求めるという手口だ。メディアというものはしたたかなもので、後日それが可能かということで検証しようとしたTV局があった。ところが、あらかじめ犯行を行う者がいることを指示していたにもかかわらず、それを見ぬけた監督者はいなかった。それほど巧妙に実行できるようだ。

 なお、京都大学のケースは二次試験であるから文章で答えなければならない。したがって何らかの方法で携帯の画面を見る必要があり、それだけ発見の危険性も高い。しかし、センター入試は全問選択式なのでマナーモードにしている携帯の振動音をうまく利用すれば全く気づかれない。

 実は中学生の時の通常の定期考査の時に、カンニングに加担させられそうになったことがある。放送で流される音楽の一部を聞いて、作曲者などを「あてる」という安易な問題だった。選択肢があってそこから選ぶのだが、その時に音楽好きな私にクラスの注目が集まったようだ。その時に課されたのは、選択肢①が正解なら右耳を、②なら左耳を触る。または咳を一つ、二つ・・・・という簡単な方法だった。不正で許されない行為だが、ノーベル賞をとった川端康成の日記を見ても昔からカンニングが横行していたようだ。もちろんカンニングが犯罪行為であることは間違いない。石川啄木はそれで学校を追われている。(なお私はカンニング要請を受けなかった。ねんのため)

 勿論、今回の「事件」はそのような疑いをもたれるような性質のものではないのだろう。だから警察は事件性なしと判断したのだろう。が、なりすましメール事件で、ITの知識不足を露呈してしまった警察だ。判断に至る手順に間違いや手抜かりはないのだろうか。世の中の進歩は大人や警察の理解を超える勢いで進んでいる。しばらくして内部告発を含むさまざまな証言が出てきて警察が慌てふためくということが無ければいいのだが。

 Heaven's vengeance is slow but sure. 「天網恢恢疎にして漏らさず」とでも訳すべきか。
我々庶民はお天道様の存在を信じ、真面目に生きてゆきたいと思うがそれが次第に難しくなってきたことを実感する。それが、かぎりなく寂しい。