【東日本大震災】風評被害とジェーン・バーキンさんの来日


 家族や友人の反対を押し切り、女優で歌手のジェーン・バーキンさんが6日フランスから来日した。東日本大震災の復興支援コンサートを開くためだそうだ。

 「バーキンさんは、ラジオから被災地に送る曲として、自身の代表曲から被災者を励ます際にいつもかけるというラブソングの「La Javanaise」を選んだ。「愛のない人生を生きていく意味はない」とフランス語で語り、日本語で「気をつけてください。ありがとう。ありがとう」と、ラジオを通じて被災地にメッセージを送った。」(毎日新聞デジタルより)

 被災地の復興が進みかけているところに昨夜、震度6という「巨大地震」が発生した。神戸の大震災の時に少し離れたところにいて震度4を体験して、私はそれでも十分に恐ろしかったが、いままた余震とも思えぬ震度6地震はどれほどの恐怖か想像も出来ない。

 地震・巨大津波。今回は更に原発放射能漏れが加わって、復旧作業が非常に複雑になっている。特に原発で「汚染」された地域は風評被害とあいまって、なかなか復旧の目途がたたない。世界は日本の品物を買わなくなり、「日本沈没」と報道した韓国では、雨が降っただけで学校を休校にするありさまだ。外国からの観光客も途絶えて、日本全体の経済活動もなんだか暗雲が漂い始めたように思われる。そんな雰囲気の中でのバーキンさんの来日である。

 彼女には自由に日本を歩き回ってほしい。大いに写真を撮ってそれをユーチューブなどに流してほしい。被災地の想像を絶する被害とともに、元気に頑張っている普通の日本人の姿を世界に伝えてほしい。本来は日本政府やマスコミの役割だが、残念ながら政府は一種の呆然状態だし、マスコミは日本は強い、日本は必ず立ち直ると、主張するばかりだ。それは真実ではあるけれど、外国から見ると戦前の日本が「我が国は神国だ、戦争に負けるはずがない」と一面的な報道を流しているのと変わらない。だから、普通の日本人に対する評価がいくら高くても、さまざまな「風評」が流れる。やはり第三者の目で日本の実情を伝える事が大切だ。

 大切なのは「ことば」だけに頼らないことだ。もし安全だと本当に思うのなら、そこに出かけて地元の人に寄り添うことである。自分の身で証明することだ。また、「風評被害」にあった野菜や、魚などの食材を我々が購入することだ。ただ、個人では出来ないので政府や自治体、大手スーパーなどが率先して、風評被害を食い止めるために「安全な食材」を流通させるべきだ。そして我々消費者は、進んでその土地の食材を購入してはどうか。もちろんその為には厳密な検査は不可欠であるし、場合によっては「証明書」をつけるような配慮も必要だ。政府の公認の証明書をつければ、海外の消費者も信頼してくれるだろう。が、まずその前に日本人が単なる憶測で食材を拒否することをやめねばならない。

 こう考えるとバーキンさんの来日は重要な意味を持っている。戦後、有名な音楽家がほとんど来日しなくなったときユダヤ人のバイオリニストのメニューヒン氏(後にイギリスに帰化)が、ドイツに続いて日本でも公演したことがあった。私は産まれたばかりで演奏は聴いていないが、その演奏は荒廃した日本人の心を慰めたと思う。そして彼が伝えた日本の国民の姿は、日本に反感を持っていたアメリカ人の心に変化をもたらしたと聞く。何よりもメニューヒン氏が日本を好きになった。

 写真で見るバーキンさんは手にビデオカメラを持っている。たぶんユーチューブに流すためだろう。そのカメラは日本人の、日本社会のさまざまな面を伝えるに違いない。「汚染された土地」と信じられている土地にわざわざやってきた「外国人」、すぐに本国に「逃げ帰った人」たち。それぞれに理由はあるのだろうが、今は東京がゴーストタウンになっているということを「本当に信じている」人たちに、そうではないことを知らせてほしい。