【団塊ひとり】はやぶさ、ギネスに認定「初めて小惑星から物質」


くらい事件や、醜い話が続く中、久しぶりに明るい話題が飛び込んだ。

7年に及ぶ宇宙での任務を終えた小惑星探査機「はやぶさ」が地球に帰還してから1年となる13日、宇宙航空研究開発機構JAXA)は、はやぶさが世界で初めて小惑星から物質を持ち帰った探査機として、ギネス世界記録に認定された、と発表した。(2011年6月13日朝日新聞

 「こころ」を持たないはずの「機械」が、生き物以上に人に感動を与える事は必ずしも珍しい事ではない。アザラシのこども型の癒しロボットが、認知症の老人に与える影響には計り知れないものがある。が、探査機「はやぶさ」のような無機質形の「機械」が「感動」をもたらすことは少ない。しかし1年前の「はやぶさ」の帰還は、日本中に大きな感動をもたらした。なぜか。

  一つには技術の優秀さを示したプロジェクトチームに対する驚きと賞賛があろう。が、私の場合は「こころ」を持たない機械にすぎない「はやぶさ」が、まるで意志を持つ生命体のように感じられたことが大きかった。特に、大気圏突入後自分の「身体」を完全に燃焼尽くし、ばらばらになりながら「カプセル」を放出した姿は、自分の生命を犠牲にして新しい生命を送り出す母の姿にも似て、言葉にならないくらいの大きな感動を覚えた。

 同時に私はそのとき明らかに「はやぶさ」の帰還を、イタケーの王である英雄オデュッセウスの帰還とも重ね合わせていた。オデュッセウスは巨人キュクロープスの眼を傷つけたことにより、ポセイドンによって帰還を妨害される。小惑星「いとかわ」を「傷つけた」「はやぶさ」もポセイドンの怒りに触れたのであろうか、などと他愛もないことを連想していた。

 ともあれ、ギネスに認定されたのは「はやぶさが世界で初めて小惑星から物質を持ち帰った探査機」
としてである。素っ気ないものの、まことに簡潔で事実の持つ重さを感じさせる。そしてその単純な事実が多くの「想像」や「感動」を生み出した。人を小馬鹿にした偽計を弄する政治家にはとうていまねの出来ないことだ。