【団塊ひとり】2012年のはじめに成人式の報道で感じたこと

 年が明けて、はやくも10日が過ぎた。

 毎年注目しているのは各地で行われる成人式である。今年は予想通り、ほとんどの土地で静かで、かつ見違えるように「大人」になった「成人」の姿が報道されていた。かえって新成人に媚びるようなパフォーマンスを見せた九州A市の市長の軽薄さが印象づけられたほどである。それに対して、私の住んでいる大阪では、新市長の橋下氏が若者のなすべきこと、考えるべきことを平易に語っていて、それを新成人もまっすぐに受け止めていたようなのが印象的だった。

 橋下氏とは本来異なる意見を持っているはずの朝日新聞も「みおつくしの鐘につながれた紅白のひもを引いて鐘を鳴らす橋下徹市長と新成人」の写真とあわせて次のような記事を載せている。

 大阪市では9日、新成人49人が市役所に集まり、屋上にある「みおつくしの鐘」を20回打ち鳴らし、「市長と明日の大阪の夢を語るつどい」で橋下徹市長と意見交換をした。
 橋下市長は「票になるところに税金は回ってくる。政治に参加して権利を主張してください」と呼びかけた。新成人が「公営施設を安く開放して欲しい」と要望すると、市長は「学校など使われていない場所はいっぱいある。安く開放できるようにすぐに部局に提案する」と応じた。
 提案した同市港区の川口こゆきさん(20)は「すぐに提案すると言ってくれたのはうれしかった。実際に開放されるかどうかチェックしていきます」と話した。(朝日新聞より引用)

 また地方の新聞も、静岡新聞なども「富士市の成人式 今年は混乱なし」という見出しで次のような記事を載せている。

 昨年、飲酒した新成人がステージ上で騒ぎを起こし、1人が威力業務妨害の疑いで逮捕された富士市の8日の成人式は、混乱はなかった。市は飲酒者対策に力を入れ、飲酒を認めた新成人2人の入場を断った。
 市は会場の同市ロゼシアターのホール入り口など2カ所に飲酒者の入場を断る看板を設置し、職員による入場者のチェックも行った。飲酒を否定する新成人がいた場合に備えてアルコール検知器1台を用意したが、使用することはなかった。(静岡新聞より引用)

 今年の「穏やか」で「真摯」な成人式の運営には、やはり昨年の大震災の影響があるのではないか。一見、平和に見える我々の生活も、実は突然訪れる「死」と無縁でないことを現代人は知った。古代人にとっては当たり前のことだが、長い間日本人は忘れていた。それをあの大震災は思い起こさせてくれた。それが今年の成人式に影響したのではないか。

 しかし、へそ曲がりな私はそれでも心配になる。本当に成人式は変わったのだろうか。若者は本当に堅実になったのだろうか。記事の取り上げ方に、マスコミの恣意的な選択が加えられているのではないか、世論誘導的な面があるのではないかと。
 
 ネットを見てみるとやはり動画サイトなどでは沖縄の「荒れた成人式」の動画が流されていた。
しかし、これについては朝日新聞もきちんと

沖縄の成人式、今年も荒れる 5人逮捕、警官と衝突も
 毎年のように逮捕者が出て「荒れる成人式」のイメージが広まってしまった沖縄県。8日、うるま市で旗ざおを持ってオートバイに乗ったとして道路交通法違反(禁止行為など)容疑で新成人2人が県警に現行犯逮捕された。新成人と暴走行為をしていた「後輩」の17歳計3人も公務執行妨害などの容疑で逮捕された。
 那覇市中心部の国際通りは、県警が総勢335人の態勢で警戒にあたった。20〜30人の新成人グループ複数が大声を上げながら歩道を練り歩き、警官と衝突する場面も見られた。
 国際通りで客待ちをしていたタクシー運転手の女性(52)は「大震災後でまだ大変なとき。きちんと振る舞ってほしい」と話した。(朝日新聞より引用)
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 という記事を載せているので、「成人式」に関しては、私が思うほど恣意的な記事の選択は無かったのかもしれない。

 今の新成人は誕生時にソビエト連邦の崩壊、4歳では阪神淡路大震災サリン事件・6歳にはバブル崩壊、その後、アメリカの9・11テロやリーマンショックによる不況とそのあおりを受けた親のリストラ。小学校高学年からはゆとり教育の洗礼をうけて、学力の低下が懸念されている「同情すべき」世代である。

 それは、朝のワイドショーで報告されたアンケートにも現れている。例えば、テレビ朝日では20年前の若者(100人)と比較して「一番ほしいもの」「一番したいこと」のアンケート結果が公表されていた。それによると一番ほしいものは今年は「お金」が41人。(20年前は23人。)「時間」9人(同7人)「車」6人(同23人)、「恋人」5人(同11人)、「その他」34人(同28人)となっている。

 また、「一番したいこと」は今年が「遊び」22人(20年前12人)、「旅行」14人(同46人)「就職」9人(同8人)「その他」40人(同26人)で、特徴的なのが20年前は「結婚」4人だったのに、今回は0人であったことだ。

 若者100人と資料の絶対数が少ないこと、またどのような母集団であるかが分からないので、簡単には判断できないが、やはりよく言われるような「閉塞的」な心情が感じられてならない。それを解消して若者が夢を抱けるようにするにはどうしたらいいのか。やはり、橋下市長が「票になるところに税金は回ってくる。政治に参加して権利を主張してください」と考えることから、出発することが大切なのかもしれない。