【団塊ひとり】北朝鮮の漂流者3人、帰国へ  第十八富士山丸事件とのあまりな違い

 残念ながら、今年もまた様々な外交問題が起こる予兆がある。特に民主党政権が続く限り、中国や朝鮮との軋轢はますます激しくなると思われる。その理由の最大の要因は、民主党政権が両国に対して融和的と言うよりも迎合的、隷属的な態度をとっていることにある。中国や朝鮮から見れば、竹島慰安婦問題・尖閣諸島問題に対する一部民主党議員の発言・態度を見ると、民主党政権はまるで自分に服属する傀儡政権のように思えるのだろう。これではますますかさにかかって日本に無理難題を押しつけてくる。これからも日本大使館の前にあやしげな像を置いたり、スパイかも知れない人間を送り込み、政府の出方を確かめたり、金銭や女性をばらまいて議員を自分たちの陣営に取り込もうとするだろう。歴史は日本ではヒストリイの訳だが、中国では歴史はプロパガンダ、朝鮮ではデマゴーグの訳だと、これまた私の悪友の口癖だが、まさかそこまでと思っていても、悪友に何度も聞かされると最近私もそう思うようになってくる。デマも執拗に繰り返せばやがて「真実」になると述べたのは確かヒトラーだったが、もしそうなら彼は人間の深層心理をよく知っていたことになる。

 さて、民主党政権北朝鮮の漂流者3人をはやくも送り返してしまった。予想されたとはいえあまりにも速すぎはしないだろうか。もちろん表面的には「人道的見地から速やかに帰国手続き」をとったのかもしれない。が、船内にGPS(衛星利用測位システム)が搭載されていることが確認されていることを考えると、工作員である可能性が非常に強いことが確認されたため、急遽やっかい払いをした疑いがむしろ高まってくる。

 もしこれが日本の漁船が難破して北朝鮮の小島に漂着したという逆の立場だったらどうなっていただろう。その時、北朝鮮がすぐに漁船員を返してくれるだろうか。そんなことは100%あり得ない。漁民は、拷問と脅迫によって北に都合の良い自白書を作成され、工作員に仕立て上げられ、彼らは有効な外交カードにされてしまうだろう。そして、北朝鮮はそのカードを手に、日本に様々な圧力をかけて経済的援助を要求したり、さまざまな外向的駆け引きを仕掛けてくるだろう。何しろ自分たちの「首領」の出生地や誕生日や経歴や政治および軍事能力を簡単にねつ造できる国だ。

 今回とは事情が多少異なるが、私は1983年11月に北朝鮮に抑留された日本の冷凍貨物船「第十八富士山丸」の事件を思い出す。第十八富士山丸の乗組員はそのあと発生したズ・ダン号事件の政府の処理に関連して、その報復として密航の幇助及び継続的なスパイ行為の容疑の判決を受け、教化労働15年の刑罰を宣告され、2年5ヶ月の獄中生活を強いられる事になった。彼らが解放されたのはそれから8年も経ってからである。その間、外務省や政府はほとんど有効な外交手段を執らなかった。帰国後もしばらく真実を語ることは禁止され、国民の多くは結果として彼らを見殺しにすることになった。

 中国や朝鮮に対する、このていたらくは必ずしも民主党政権だけではなく、自民党政権にも深く染みついている。「まさかの友こそ真の友」という言葉がある。が、中国や朝鮮で我々が困難に遭遇したとき、日本政府が守ってくれる保証は無い。こんなおかしな国に我々は住んでいるのだ。

 しかし、私にとっての救いは、東日本大震災で見せた「普通の人々」の勇気と思いやりである。日本もまだまだ捨てたものではないと確信できた。経済的に安定し、常に安全なところから発言する政治家は、少なくともこうした「普通の人々」の願いを妨げないようにしてほしいと願うのは私だけだろうか。そしてマスコミは政府の「圧力」に屈せず「真実」を報道する姿勢を捨てないでほしい。