【団塊ひとり】日本の「軽」は不合理・廃止を…米自動車大手・TPPとスーパー301条の悪夢 

 私は経済については素人なので、以下の見解は誤っているかも知れない。が、最近締結が「熱望」されているTPPは、かつてジャパンバッシングの根拠とされた米国のスーパー301条を思い出させて、不安でならない。その不安を増幅するような記事が出ていた。

 【ワシントン=岡田章裕】米通商代表部(USTR)は13日、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉に日本が参加することに対する意見公募を締め切った。
 米自動車大手3社(ビッグスリー)で組織する米自動車政策会議(AAPC)は、日本の自動車市場の閉鎖性を理由に「現時点では反対」と表明し、参入障壁となっている軽自動車規格については、「廃止すべきだ」と主張した。
 今年秋の大統領選を控え、大きな雇用を生んでいるビッグスリーの政治に対する影響力は大きい。月内にも始まるとみられる日米の事前協議で自動車分野は大きな焦点で、交渉は難航が予想される。
 AAPCは、日本独自の軽自動車規格について、「市場の30%を占めているが、もはや合理的な政策ではない」と批判した。日本の技術基準や、認証制度などの規制も参入の障害になっており、透明性が必要としている。1990年代後半からの日本政府の円安誘導政策も、米国車に不利になっていると指摘した。(読売新聞より)

スーパー301条についてはウイキペディアの説明を借用する。

 スーパー301条とは、1988年に施行されたアメリカ合衆国の「包括通商・競争力強化法」(Omnibus Foreign Trade and Competitiveness Act) の対外制裁に関する条項の一つ。通商法301条(貿易相手国の不公正な取引慣行に対して当該国と協議することを義務づけ、問題が解決しない場合の制裁について定めた条項)の強化版である。
 不公正な貿易慣行や輸入障壁がある、もしくはあると疑われる国を特定して「優先交渉国」とし、アメリカ通商代表部 (USTR) に交渉させて改善を要求し、3年以内に改善されない場合は報復として関税引き上げを実施するという内容であり、非常に強い力を持った条項である。
 しかし、「GATT(関税および貿易に関する一般協定)に違反しているのではないか」という疑いが持たれており、何度か失効している。(ウイキペディアより)

 この条約によって最も強い影響を受けたのは自動車業界だったように思う。自主規制という、今から考えれば極めて「不公正」な対応を強制された。さらに私にとって忘れられないのは東京大学坂村健氏が1984年に提唱された国産OSトロンが葬り去られたことである。私が初めてポケットPCを購入したのは1980年の夏。当時は今のような便利なソフトが少なかったので、文系の私はMicrosoft BASICをベースにしたN-BASICを使用して簡単なプログラムに挑戦して、For~Nextやgo toなどというPCの「文法」と格闘していた。また漢字をPC上で表示するのに、座標を指定しなければならないという不便も経験した。坂村健氏が提唱したB−TORONはこれらの困難を一気に解消するものと私には思われた。しかしそれは政府に採用されなかった。マイクロソフト社や現ソフトバンク社の孫正義氏などの反対があったと聞いている。ともあれトロン仕様のPCの学校配置案は消滅した。かわりにウインドウズ仕様のPCが学校に設置されていった。

 私はPCの専門家ではないので当時トロンがどの程度完成の域に達していたかは知らない。が、少なくともその芽をつむ方向に動いたのがスーパー301条をちらつかせた米国の脅迫であったことは間違いない。TPPはその二の舞にならないだろうか。農業だけではなく、保険・金融その他思いもつかない形での圧力が入り、日本の社会が崩壊してしまう危険性はないのだろうか。例によってマスコミも利点ばかりを取り上げているが、もう少し欠点や危険性も明らかにしてほしい。国の将来を考えると「想定外」が発生するリスクは出来るだけつぶしておくべきである。

 もちろん、これらは素人の杞憂かもしれない。が、米国という肉食国家。民主党という二枚舌政権の言うことを素直には信じる気にはなれない。TPPは農業や関税だけではなく、我々の社会構造にも大きな影響を及ぼしかねない。TPPは本当に日本社会に活性化を与える仕組みなのか。それとも特定の国に有利な結果をもたらす、「毒」を含んだ危険な協定なのか。政府が説明しないのなら、マスメディアはメリット・デメリットを詳しい対照表にして、判断の基準を国民に示す責任があると思う。原発報道でややもすれば大本営発表的な役割に終始したかのように見えるメディアは、この機会にその存在理由を示してほしい。