【団塊ひとり】大阪知事の特別秘書、合格者なし…待遇で物別れ まず隗より始めよ

 大阪府の特別秘書の合格者が出なかった。「待遇」面で合意とならなかったようだ。読売新聞によると次のようだ。 

 大阪府は5日、松井一郎知事の政策面のブレーンとして公募した特別秘書について、合格者がいなかったと発表した。

 全国から53人の応募があったが、最終面接に残った候補者と報酬面で折り合いがつかなかったという。府や大阪市は新年度から幹部ポストの公募制導入を検討中だが、優秀な人材確保には待遇改善が必要となりそうだ。

 特別秘書は条例に基づく特別職公務員。松井知事には政務担当の特別秘書(35)がいるが、「国の制度や財政に強い人が必要」との知事の要望で1月下旬から約2週間募集した。給料の条件は「原則、一般行政職に準じる」とした。

 応募者は会社員や公務員、弁護士、公認会計士ら。府は書類審査で8人に絞り、幹部面接で選抜した4人を松井知事が面接。1人を選んだが、待遇面で理解が得られなかった。府は提示した給料を明らかにしていないが、松井知事は報道陣に「(給料が)5分の1とか、6分の1になれば難しい。(今後は)特別顧問にもう少し活動を広げて手伝ってもらいたい」と述べた。(年3月6日 読売新聞)

 この記事を読んで私は、漢文で誰もが習うだろう教材「先ず隗より始めよ」という故事を思い浮かべた。死馬に500金を支払った結果、多くの千里馬(名馬→優秀な人材)が集まったという話だ。そこでも述べられているように優れた人材を集めようとすれば、まず最初の対象者を優遇すべきだ。そうすれば人材は自ずから集まる。

 ネックとなった給料の条件は「原則、一般行政職に準じる」らしい。法律面での縛りがあるのかも知れないが、素人目には「特別」と「一般」の語句の齟齬が気になる。「特別」とあるから「特別待遇」を期待するのは当然で、「いや、それは名称だけで実際は普通の公務員です」となれば誰でも二の足を踏む。松井知事や橋下市長のように、自分の給料を大幅に削り、理想を全面に押し出して進む人だけではないからだ。

 わたしは仙人ではないので「霞」を食って生きるわけにはいかない。それなりの生活を確保したい。家族がおれば「理想」だけに生き「清貧」に甘んじる覚悟も生まれない。いくら小市民的と軽蔑されようと、たぶん多くの人も同じような気持ちを抱いているのではないか。

 勿論、理想のために自分の生命さえ投げ出す人も多い。ある人は勇気を前面にだして、潔く炎に焼かれることもいとわない。また、自らの「弱さ」を自覚し迫り来る恐怖に闘いながらそれでも自分に与えられた「使命」を全うするためにあえて死すら受け入れようとする人も多い。そのひとりである、ある聖人の発した「ゲッセマネの祈り」は、私のような不信心なものにも、強い感動を与える。その聖人は修行中の悪魔の誘惑に対して、「人はパンだけで生くるにあらず」と言ったが、それでも「だけ」という助詞を付け加えることを忘れなかった。その「だけ」という言葉は、私のような弱い人間には、かすかな救いである。

 「維新の会」に期待する人が増加している。政策には今の日本に必要なものも多い。今まで誰も踏み込めなかった「聖域」に踏み込んで、大阪市のひどい状態が明らかになったのも、橋下市長の手腕によるところが多い。民主党も「理想」を説いたが、それはいつも「・・・・します」という表明に終わり、実行には至らなかった。「沖縄の基地を国外に移します。最低でも県外に・・・・私を信じて」。信じた結果何が起こったか。障害者自立支援法に関して民主党政権はどのように振る舞ったか。同じ「理想」を説いても違いは明らかである。

 しかし、いかに素晴らしい政策でも、性急なあまり現実から急激に遊離してしまうと失敗する。歴史はそれを証明している。時には立ち止まり、現実を確認することも必要ではなかろうか。