【団塊ひとり】野田首相発言 TPPはビートルズ 日本はポール・マッカートニー?

 野田首相は不思議な人だ。就任時には自らをドジョウに例えて謙虚なのか自虐なのか分からない挨拶をしたかと思うと、最近は「適材適所」「最高の人材」と保証書をつけて送り出した閣僚が惨憺たる状態に置かれても、更迭もせず「暖かく」見守る。そのことでいくら党の支持率が下がっても、気にしないところは「大物」なのかもしれない。だから私のような凡人には理解しがたいところが多い。例えば、TPPをビートルズに例えたことだ。特に日本をポール・マッカートニーに、米国をジョン・レノンに例えたことだ。新聞記事で確認する。

 野田佳彦首相は24日、有識者による「日本アカデメイア」が都内で開いた交流会で講演し、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)参加問題について「日本がポール・マッカートニーなら米国はジョン・レノンだ。ポールのいないビートルズはありえない。この2人がきちんとハーモニーしなければいけない」と語り、強い意欲を示した。
 さらに、「日本が(交渉の)ルール作りに関わることがプラスになるという点を押さえながら協議していく」と述べた。(産経新聞 3月24日より)

 団塊の世代は、何らかの形でビートルズの影響を受けている。好むと好まざるに関わらずマッカートニーが作曲した「イエスタデイ」(Yesterday)「ヘイ・ジュード」(Hey Jude)「レット・イット・ビー」(Let It Be)などのメロディを耳にした人は多い。私も例に漏れず、後のアップル盤(Apple Records)以前のオデオンレーベルの30センチLPもいくつか持っている。特に日本独自編集の「Meet The Beatles」(モノラル盤)は音がすり切れるほど聴いた。きっと野田首相ビートルズのファンなのだろう。

 私はジョージハリソンのギターが好きだが、ビートルズサウンドの多くは確かにポールとジョンが醸し出していた。が、ビートルズ崩壊のきっかけを作ったのはポールの脱退宣言だ。一説には日本人のオノ・ヨーコが原因だとされている。それが理由かポールは捕鯨が国際的な問題になった時「日本人は人間の友達を食べる!」「人間の友、クジラを喰う日本人は人肉喰い野郎だ」と非難した。(フリー百科事典『ウィキペディアWikipedia)より引用)また、ケーブルTVの「アニマルプラネット」とともに、日本の調査捕鯨に暴力的な攻撃を仕掛けるエコテロリスト団体シーシェパード(Sea Shepherd Conservation Society)に多額の資金援助をしている。また麻薬に関係して何度も逮捕され、日本のブラックリストにも載っている人物だ。ビートルズ脱退後に結成したウイングス時代には「フローズン・ジャップ」という曲も作っている。私はポ−ルの曲は好きだが、音楽家以外の行動には疑問を抱かざるを得ない。

 ジョン・レノンも優れた音楽家だが、ビートルズ解散後は平和運動家として、様々な評価を受けている。今は否定されているが暗殺直後は、「CIA関与説」などの陰謀説も浮上していたくらい彼の影響力は強かった。またキリスト教会の反発もきつい。米国社会が彼に寄せる反応は、かつてのチャップリンに対して示したと同じように複雑なものだ。

 つまりポールとジョンは深く結びついていたと同時に、やがて別々の道を歩むようになった。だから私には野田首相の比喩がよく分からない。TPPはビートルズだ、ということはやがては内紛が起き分裂すると言いたいのか。「日本がポール・マッカートニー」ということは、TPP崩壊の口火を切るのは日本だと暗示したいのか。残念ながら私の単純な頭ではよく理解できない。