【団塊ひとり】韓流ドラマ垂れ流しよりも日本の過去の名作・ドラマの復活・再放映を

 私が住んでいる大阪に関西TVというTV局がある。その略称はKTV。いわゆる韓流ドラマを多く放映しているらしく、身近にいる口の悪い人間は、「韓国TV」とか「コリアンTV」と呼んでいる。一時ネットでも攻撃されたと聞いている。私は韓国ドラマは「冬のソナタ」以外ほとんど真剣に見ていないが、竹島問題・五輪サッカー事件・李明博天皇侮蔑事件以後は、韓流ドラマやタレントなどに対して多少の北風が吹くかもしれない。

 そう思っているとさっそく竹島に泳いで政治的パフォーマンスをした韓流タレントが出演するドラマが放映延期になった。今の状況では当然である。が、それに対しては同情的な意見もある。「韓流スターが竹島に行ったホントの理由…イヤと言えなかった?」という表題でZAKZAKというサイトが次のような文章を載せている。

 わが国固有の領土である竹島(韓国名・独島)へ俳優のソン・イルグク(40)が15日、水泳リレーで到着したことを受け、BS日テレとテレビ東京系のBSジャパンは、それぞれソン主演ドラマの延期を発表した。日本ではBS放送を中心に、かなりの時間帯を韓流ドラマに依存しているのが実態だが、今後どうなるのか。

 ソンや体育大学の水泳部学生とともに水泳リレーした歌手、キム・ジャンフン(47)は韓国・中央日報などの電話インタビューに応じ、日本のBS日テレがソン主演のドラマ『神と呼ばれる男』の放映を延期したことに触れ、こう話した。

 「最近の韓日関係を考えれば向こう側でも韓国ドラマを放映するということが自国内の感情上、大変だと思う。恥ずかしい面もあるが、このような時であるほど、さらにソン・イルグクを愛してくれたら良いと思う」

 騒動を起こしておいて、何とも勝手な理屈だが、日本の一部韓流ファンの中には、「ソンが巻き込まれた」と擁護する見方もあるという。

 「ソン主演の歴史ドラマ『朱蒙チュモン)』は日本でも繰り返し放送される人気で、日本でもファンミーティングや登山ツアーなどを行い、もともとは親日的だった。“独島問題”に積極的な友人のキム・ジャンフンに誘われ、イヤと言えなかったのだろう」(韓流ジャーナリスト)

 だが、ソンの生い立ちをみると、当人にもイヤとは言えない事情がある。

 「祖父は独立運動で英雄視されたキム・ドゥハン。母は女優で国会議員のキム・ウルドン。李明博大統領の与党であるセヌリ党の所属です。しかも、ソン自身も三つ子の息子にテハン(大韓)、ミングク(民国)、マンセ(万歳)と名付けるほどの愛国者なのです」(同ジャーナリスト)

 ソンに限らず、韓流タレントの多くは、自国と日本での芸能活動は顔を使い分けている。今後も“独島PR”に駆り出されるタレントが現れても不思議はない。日本のテレビ各局は、どう対応するのか。

 「今後も問題が起きれば“対症療法”でいくしかないが、韓流ドラマを一掃することは現状では不可能だ。良質な上にコンテンツ料が安上がりで、代わる番組がない。人気作品と不人気作品を抱き合わせで買わされたりもしてるけど…嵐が通り過ぎるのを待つしかないね」(テレビ制作会社スタッフ)
ZAKZAKより)

 ZAKZAK夕刊フジの公式サイトであり、夕刊フジはフジテレビの傘下であり、関西TVはこのフジTVの準系列局であるから、ほほんと思ってしまう。

 さて、「韓流ドラマを一掃することは現状では不可能だ。良質な上にコンテンツ料が安上がりで、代わる番組がない。人気作品と不人気作品を抱き合わせで買わされたりもしてるけど…嵐が通り過ぎるのを待つしかないね」という意見にはとても賛成できない。最近のNHKのドラマ「はつ恋」や、NHKの朝ドラなどは韓流ドラマよりも造りが丁寧で団塊の世代にとってはじわりと心にしみてくる。

 ところで日本には本当に良質でコンテンツの安い作品はないのか。そんなことはない。韓流ドラマがおそらく手本にしただろう30数年前の日本のドラマ群がある。それらの再放送は主にケーブルTVが引き受けているがこれが実に面白い。山口百恵が中心だった「赤いシリーズ」などは、地上波で再放送されると団塊世代を中心に二桁の視聴率をとると思う。その他、マーガレット・ミッチェルの小説「風と共に去りぬ」をモチーフにした「華の嵐」(若いときの高木美保が主演)、」同じくエミリー・ブロンテの小説「嵐が丘」をモチーフにした「愛の嵐」(若い田中美佐子の姿がまばゆい)などは、60を過ぎて出会った作品ながら一目でその世界に入ってしまい全部で69話もあるのに、再放送も欠かさず見てしまうほどだった。その他一条ゆかりの漫画「砂の城」を原作にした「砂の城」(森下涼子が妖しい魅力をみせていた)など枚挙にいとまがない。これらは昼ドラとか呼ばれていたそうで、ウィキメディアの分類によれば

「日本の昼ドラは大別すると、「家族・親子の愛情譚」、「男女の関係において、演劇的に誇張された愛憎劇」、「(温泉地や病院といった)労働の現場における奮闘劇」を題材にしている。ほぼ例外なく中高年の主婦層を意識して製作されており、女性キャラクターの視点を中心に描かれる作品が圧倒的に多い。・・・・2009年以降は愛憎劇以外にも、純愛物・時代物・ファンタジー物・アクション物などの作品を放送し、愛憎劇偏重の路線から変化を図っている。」(ウィキメディアの分類)らしい。

 「中高年の主婦層を意識して製作」という所にひっかかるが、65歳の団塊オヤジがはまってしまった。ドロドロがこんなに面白いとは思わなかった。もしかしたら過去の作品群には、宝のような作品が眠っているのではないか。私にはロボコップなどは「宇宙刑事ギャバン」の模倣以下に映る。40年も前の歌謡曲由紀さおりさんのすばらしい歌唱と新鮮な編曲によって世界的なヒットになったように、日本の過去の作品には発掘すればまだまだすばらしいものがあるはずだ。同じように日本人自身が気づいていない芸術がまだまだあるはずだ。浮世絵だって最初は二束三文で売り飛ばされた。日本人は昔から自分の文化の価値がわからないらしい。J-POPやK-POPがあれほど費用をかけ宣伝しているのに、アメリカではほとんど話題にならない。それに対して、ほとんど宣伝しなかった由紀さんの「歌謡曲」がアメリカ人によって「発掘」され1位になった理由を考えるべきだろう。

 日本と韓国はしばらくは冬の時代が続くかもしれない。が、これを機会に「人気作品と不人気作品を抱き合わせで買わされたりもしてる」というような自信のない経営方針はやめて、もっと日本の将来を見据えた企画を立ててほしい。同窓会で話をするとやはり韓流ドラマにはまっている団塊女性も多い。が、よく聞いてみるとその多くは昔の日本のドラマを見るように韓国ドラマを見ている。多くの韓国ドラマが団塊世代の頃の日本人の人間ドラマを思い出させるのだ。

 高齢者であるが、団塊の世代は時間的にも経済的にもある程度余裕のある世代だ。興味や好奇心も人一倍持っているつもりだ。しかも若者よりも圧倒的に人数が多いしまだ20年くらいは生きる。いわば団塊世代はすべての点で一つの圧力になり得る世代だ。その世代を地上波の世界に呼び戻そうと思えば、TV局もそれなりの努力・工夫が必要だと思うのだが。