【団塊ひとり】尖閣売買、地権者が国と合意…都を通さず購入へ

 あれほど政府を信用せず、信頼できる石原知事に尖閣の未来を託す、とまで言っていた地権者が国に所有権を委譲するようだ。もし誤報ではなく新聞記事が正しかったとすれば、いままで述べていたことは何だったのだ。都に浄財を集めた人の気持ちを裏切るだけではなく、人間としてのあり方にも大きな疑問をいだかせる行為だ。石原知事との交渉も結局は金をつり上げる手段に過ぎなかったのか。私は信じたくない。

 もちろん、私有地であるという不安定な状態から、国有地に移転することは当然でむしろ遅きに失したくらいだ。現時点での最大の問題。それは日本政府が尖閣諸島を国際的な基準での「実効支配」をしていないことだ。その意味で国有化は前進とも言え、喜ばしいことのはずだ。

 が、なぜ不満と不安が残るのか。それは国有化されても現状とほとんど変わりがなく、むしろ「今の政府」に所有が移っただけ、かえって領土を失う危険が増したように感じられるからだ。それは親中国・親朝鮮の傾向のある民主党政権が国政を握っていることと無関係ではない。

 実効支配であることを世界に示す方法は色々あるが、もっともわかりやすいのが、竹島南朝鮮が、北方領土でロシアが実行しているように、「支配権」を主張する現地に警察や軍隊や自国民を常時駐留させておくことだろう。同時に、政府の主導で恒久的な建造物を建設し、特に国際規格にのっとった灯台を建設し自国所有の灯台として海図に載せることだろう。が、それらのすべてを民主党政権は拒否している。不思議な話だ。特に灯台の建設とその位置を海図に載せることは日本だけではなく、その近辺を航海するすべての船舶の安全に有益であるはずなのに、なぜそれまで反対するのか理解に苦しむ。なぜ、民主党政府は国民の血税を投入して土地を購入しながら、大規模な中国漁船の乱獲を放置し零細な地元の漁民を尖閣の海域から閉め出し、地元漁民の安全を守ろうとしないのか、理解に苦しむ。ともあれ新聞記事を引用する。

 政府は、尖閣諸島沖縄県石垣市)の購入に関し、埼玉県在住の地権者との間で売買契約を結ぶことで合意した。
 複数の政府関係者が4日、明らかにした。尖閣諸島は東京都が購入を目指していたが、東京都を通さず国有化されることになった。
 政府が購入するのは、魚釣島うおつりじま、北小島きたこじま、南小島みなみこじまの3島。東京都などが求めていた船だまりや灯台などの構造物は作らず、基本的に島を現状のままで維持する。島の国有化を通じて、日本の実効支配を強めることを取得目的とする。購入額は約20億5000万円で、近く売買契約を締結する。
 尖閣諸島の平穏かつ安定的な維持管理につなげるため、国有化後は海上保安庁が島を所管する方向だ。
 政府関係者によると、長浜博行官房副長官が3日、地権者の男性と会い、契約に向けた詰めの交渉を行って合意した。(読売新聞9月5日記事より)

 「海上保安庁が島を所管する方向」が明示されたことはわずかな進歩だが、少人数にもかかわらず、香港の活動家を簡単に上陸させ国旗を振らせるというアピール行為を容認するという「失態」(合意?)実績を持つ海上保安庁だ。仮に漁民に姿を変えた「解放軍」の兵士が装甲で武装した「偽装漁船」で、あるいは台風による緊急避難を口実に数百人規模で押しかけたらなすすべもないだろう。そして正体を隠した中国得意の便衣兵が大挙上陸しそのまま居座ったらどうなるか。その時は新しい「竹島」の出現だ。そうなっては手遅れだ。しかし民主党政権便衣兵の上陸を容認するかもしれない。ここが最大のポイントだと思う。

 今が大切な時期であることは素人にもわかる。中国共産党第18回大会の開催を控えた中国は「無用」な摩擦を避けたい。民主党も出来るだけ政権を延長させたい。問題の先送りは両者にとっての共通の利益のように思われる。が、中国共産党大会終了後新政権が発足したら状況は一変するだろう。業績作りの第一歩として尖閣が利用される可能性は大きい。愛国心の刺激はもっとも手っ取り早い政権確立の方法だから。中国は必ず強硬姿勢に転じるはずだ。

 残念ながら、島根県竹島や北海道のいわゆる「北方領土」は日本国の「実効支配」が及んでいないために、侵略国の不法占拠が続いている。いくら「正義」や法の遵守を訴えても、ひとたび無法状態におちいればそれを回復するのは一筋縄では行かなくなる。

 が、悲観ばかりしないで、ここは中国の故事「塞翁が馬」に習って考えてみたい。
 つまり民主党政権が信頼できないならば、政権を変更すればよい。国有化により、尖閣の処理は国家の意思が優先されるわけだから、尖閣の実効支配を確立できる可能性のある政党や政治家を選べばよい。考えてみれば簡単なことだ。と、するならば自民党の石原幹事長が総理となるような政権が出来るのが最も理想的かもしれない。(ただ私は自民党も信頼しない。何よりも竹島尖閣の問題を先送りしてきた張本人であるからだ)

 今回の「売却騒動」を契機にして日本国内にある「内なる竹島」、「内なる尖閣」問題を考えてみるのもよい。相手が誰であれ大金を手にするためには国益など考えず売却する人間がいること、そして今の法律ではそれを止める手立てがないこと。たとえば、我々日本人は中国の土地を数ミリでも購入できないのに、中国総領事館が1万5千平方メートルもの広大な新潟の土地をなぜ購入出来るのか。北海道の貴重な水源地が中国資本によって買収されているが、それを放置していてよいのか。水源地の買収はかつて日本が失敗した外国のゴルフ用地やビルを買収したこととは質が違う。単に地方の問題としてではなく国民して考える契機になればと思う。

 もしかしたら大金を示した中国人に地権者は尖閣を売り飛ばしていたかもしれないのだ。だから、国益に関わる外国資本への売買を規制できる法律を早急に作るべきだ。そう考えれば今回の売買騒動も意味があるような気がしてくる。