【団塊ひとり】由紀さおりさん紫綬褒章の受章、そして20年ぶり単独紅白内定

 団塊世代の「ひとり」として同じ団塊世代の歌手由紀さおりさんの、紫綬褒章の受章、そして20年ぶり単独紅白内定は二重の喜びである。心からおめでとうと言いたい。朝日新聞も事務的ではあるが紫綬褒章の受章を次のように伝えている。

 政府は2日付で、秋の褒章の受章者を発表した。受章するのは712人(うち女性125人)と24団体。3日に発令される。
 学術や芸術、技術開発などの功労者に与える紫綬褒章は29人(同7人)。このうち芸術文化の分野では、歌手の由紀さおり(本名・安田章子)さん(65)や俳優の三浦友和(本名・三浦稔)さん(60)、小説家の松浦寿輝ひさき)さん(58)ら。ロンドン五輪で金メダルに輝いた男女7選手も、スポーツ振興の分野で功績が認められた。(朝日新聞より)

 由紀さんはアルバム「1969」のヒットで、昨年の紅白に出るだろうと期待していたのに選ばれなかったので今年の出場確定は嬉しい。

 実は先月の16日「由紀さおりとピンク・マルティーニ」の公演を鑑賞したばかりである。場所は旧大阪厚生年金会館跡だった場所に建設されたオリックス劇場。ここはあの山口百恵さんが大阪でのラストコンサートを開いた劇場だ。もちろん私もそのコンサートに参加した思い出の劇場だ。あのときもなぜか中年の観客が多かった。今回の由紀さんのコンサートも年配の人が多かったように思う。

 ピンク・マルティーニは今回が初めてだが、専属の歌手も落ち着いた歌声で、時々ハンフリーボガードの出演する映画の一場面を思わせる雰囲気が漂っていた。由紀さんは全体の半分程度の出番しかなかったのが残念だが、十分に楽しめた公演だった。

 由紀さんの最初の曲は、オリジナルの「1969」と同じ「夕月」から始まった。(日本版は「ブルーライト・ヨコハマ」が一曲目)歌う前に由紀さんはこの歌を昨年の大震災と関連づけて語られた。私が「1969」を購入したのは一年前だが、同じ感想を持っていたので素直に共感できた。そして歌声を聞いて不覚にも涙を流してしまった。周りの人も何人かが目頭を押さえている。私は発表当時の黛ジュンさんのオリジナルのレコードも持っているが、この「失恋」を歌った40年以上も前の曲を聴いてかつて一度も涙を流したことはなかった。

 おしえてほしいの 涙のわけを
 見るもののすべてが 悲しく見えるの
 夕月うたう 恋の終わりを
 今でもあなたを 愛しているのに

 以下、「許されるものならあやまりたいの」「忘れるすべを」と歌われる。本来は、かけがえのない恋を失った喪失感を歌ったにすぎない歌が、大きな悲劇を体験した「日本人」の悲しみを共有する歌へと変化していた。歌そのものが秘めていた力であると共に、震災の被害者に寄せる由紀さんの「寄り添うこころ」と、歌唱力がもたらした大きな効果であるように感じられた。

 「CDを購入すれば握手できます。」会場の広告だ。私は30センチのLP時代からのファンだったので、代表曲はほとんど持っているがもちろんCDを購入し、無事握手をして帰った。ミーハーと言われようが、幸せなひとときだった。