【団塊ひとり】日曜の朝は「題名のない音楽会」を見る

 することがない訳ではないが、最近は朝からのTV視聴が習慣となった。今日は「題名のない音楽会」を視聴。黛敏郎氏の司会時代から見てきた番組だ。今回は萩原麻未さんのピアノ、山田和樹さんの指揮でラベルのピアノ協奏曲が取り上げられていた。ラベルのピアノ協奏曲は萩原さんがジュネーヴ国際音楽コンクールで優勝したときの曲目だ。

 大阪で開かれた山田さんの演奏会に行ったことがある。その時の演目のひとつの「幻想交響曲」はブザンソン国際指揮者コンクールで優勝したときに撰んだ曲。小澤征爾氏が代役に指名しただけあり、これからの日本の音楽界を背負う素晴らしい演奏だった。

 まだ小澤征爾氏がボストンにいたころ、私の知人が食事に招かれたことがあった。羨ましいので感想を聞いてみると、世界的な大指揮者とは思えないほど気さくな人柄で、無名の人間にも分け隔て無く接してくれて、とてもいい印象を持ったようだ。小澤征爾氏もそうだが、山田さんも演奏後はオーケストラのメンバーに実に丁寧に感謝の意を表す。オーケストラにおける指揮者の役割を自覚しているのだろう。ハグも自然で、若さと海外経験の多さが感じられる。

 私はブラームスなどドイツ系の音楽が好きだが、疲れたときはなぜかショーソンやドビッシーなどのフランス系の音楽家を聴く。なかでもラベルの『亡き王女のためのパヴァーヌ』 は必須の曲だ。始めて聴いたときは、世の中にこんなに美しい曲があるとはと驚いたほどだ。

 番組を見ていて、面白いと思ったのは、演奏中に萩原さん山田さん、そして司会の佐渡裕さんの「つぶやき」(会話)が画面の左隅に適宜挿入されたことだ。最初は、うん?と思ったが、そのうちに必要不可欠な存在のように思えてきた。なるほどこんな気持ちで演奏していたのか。指揮者はこんな気持ちを持っているのか。両者の気持ちがあっているところ、微妙なずれが感じられるところ等が、煩わしくなく伝わってくる。以前にもこのような試みはあったのかも知れないが、面白い演出だと思った。演奏会とツイッターの合併のような試みは、自由な発想の番組ならではの長所だろう。

 今はどこの番組でも使用している発言の字幕表示。最近の話者は早口の傾向がある。だから、ときどき聞き取りにくいときがあったのだが、字幕のおかげで安心して聞き取れるようになった。どこの番組が始めたのだろう、難聴者や高齢者には非常に助かるシステムだ。最近は画面をキャプチャーして保存して簡易ビデオのように利用している。地上TVが面白くなくなったと言われているが、「題名のない音楽会」のような良質な番組も多い。まだまだ捨てたものではない。