【団塊ひとり】環球時報の沖縄独立支援策の時代錯誤


 中国共産党機関紙、人民日報傘下の国際情報紙、環球時報が沖縄の独立勢力を「育成すべきだ」などと中国政府に提案した。

【引用】中国紙、今度は沖縄独立勢力を「育成すべきだ」と主張 露骨な内政干渉

 【北京=矢板明夫】中国共産党機関紙、人民日報傘下の国際情報紙、環球時報は11日付の社説で、8日付人民日報に掲載された、沖縄の帰属は「未解決」とする論文の主張に改めて言及し、沖縄の独立勢力を「育成すべきだ」などと中国政府に提案した。日本の内政に露骨に干渉する内容で、日中間の新たな外交問題に発展する可能性もある。

 社説は「日本が最終的に中国と敵対する道を選んだならば、中国はこれまでの政府の立場の変更を検討し、琉球(沖縄)問題を歴史的な未解決の懸案として再び提出しなければならない」と主張した。

 その上で「中国は琉球への主権を回復するのではなく、今の琉球の(日本に帰属している)現状を否定できる」と強調。この問題で日本政府に圧力を加えるため、具体的に3つのステップを中国政府に提案した。

 まず、「琉球問題に関する民間レベルの研究・討論を開放し、日本が琉球を不法占拠した歴史を世界に周知させる」。次に、「中国政府が琉球問題に関する立場を正式に変更し、国際会議などで問題提起する」。それでも日本政府が中国と敵対する姿勢を続けるならば、「琉球国の復活を目指す組織を中国が育成し、支持すべきだ」と主張。「20〜30年がたてば、中国の実力は強大になる。決して幻想ではない」と牽制した。

 同紙は、日本との対決をあおる社説をこれまでもしばしば掲載している。編集長の胡錫進氏は習近平国家主席の周辺に近いとされる。(産経新聞より)

 第一に「琉球問題に関する民間レベルの研究・討論を開放し、日本が琉球を不法占拠した歴史を世界に周知させる」そうだ。ほほう、意外に「正論」を述べるんだね。

 第2ステップは、「中国政府が琉球問題に関する立場を正式に変更し、国際会議などで問題提起する」。第3ステップは「琉球国の復活を目指す組織を中国が育成し、支持」するらしい。最終目的は中華帝国の完成、すなわち中国の世界支配だろう。恐ろしい。

 環境時報の提案した3つのステップは、私には自らが天に向かって唾を吐くようなものだ、と思われる。ブーメランのようにやがて中国に跳ね返ってくるだろう。中国政府が採用するとは思えない。が、もし採用したとしても日本政府は冷静に対処すべきだ。適当にコメントを流しておけばいい。

 環境時報の提案は少し文面を変えるだけで、そのまま中国に投げ返すことが出来る。
琉球」を「チベットウイグル」、「日本」を「中国」に「中国」を「日本」に置き換えればそのままブーメランのように中国に跳ね返る。

【本文】「琉球問題に関する民間レベルの研究・討論を開放し、日本が琉球を不法占拠した歴史を世界に周知させる」。
【訂正文】「チベットウイグル問題に関する民間レベルの研究・討論を開放し、中国がチベットウイグルを不法占拠した歴史を世界に周知させる」

 その他のステップも同様に変更できる。この提案の裏には様々な意図が隠れている。国名を変更すれば次のような文章が現れる。

「ハワイ問題に関する民間レベルの研究・討論を開放し、アメリカがハワイを不法占拠した歴史を世界に周知させる。」アメリカだけではない、国名を交換すれば世界に多くの植民地を持っている西欧諸国の全てに当てはまる文章だ。その意味でこの文章の構造は普遍的な性格を持っている。それ故に発信者自身にも痛烈に跳ね返ってくる。発信者だけが無傷になることはない。

 第3ステップの主張で困るのは沖縄の反基地運動活動家だろう。自分たちの行動が全て中国の指令に基づいたものととられかねないからだ。沖縄だけではない。日本の反政府活動の全てが中国の指令の下に行われているようにとられてしまう。

 環境時報の主張は中国の愛国主義反日主義を一時的には高め、民主党などは力づけられるだろうが、日本政府は静観すればいい。まともに反論すれば国の品位が失われる。この程度は日本のブログや新聞などの民間の批判に任せておけばいい。

 心配なのはかつて欧米諸国に流行したyellow peril(danger,terror),gelbe Gefahr,péril jaune、すなわち黄禍論の復活だ。中国の帝国主義的な時代錯誤の膨張主義。その中国にすりよる韓国。あからさまにアメリカを脅迫する北朝鮮。これらは放置しておればやがて「新しい黄禍論」が起こる可能性がある。

 周知のように、かつてのアメリカやドイツでの黄禍論の主たる対象は安い労働力として供給された中国人・朝鮮人だった。特に中国の義和団の乱は強い警戒心を欧米にもたらした。この時点では日本はまだ西欧諸国の側にいた。それも日露戦争に勝利するまでだ。日露戦争の勝利は確かに日本の世界的な地位を高めたが、同時に欧米人の間に強い警戒心をもたらす結果になった。そのことに日本人は気づくべきだった。日本人が世界からどのように見られているのかをもっと自覚すべきだった。それらを考慮した上で自己主張すべきだった。

 欧米人は公正な側面もあるが、嫉妬深く偏見に満ち残虐な側面もあわせ持っている。ある一線を踏み越えると警戒され、敵視される。いまでもスキージャンプで日本の勝利が連続したり、バレーボール、柔道、水泳などで日本が勝ちすぎると、日本に不利になるようなルール改正が行われ、見えない日本バッシングが実行される。見えないバッシングは気づきにくい。それを避けるために必要なのはお互いを知り合うことだ。相互理解の努力を怠らないことだ。私はその最高の理想型をIPS細胞を発見した山中教授の姿勢に見る。素晴らしい業績を成し遂げているのに、謙虚で周囲に対する配慮を失わない。外国の友人も多い。何よりも高い志を抱いている。21世紀に誇るべき日本人の一つの姿だ。

 しかし、一部の日本人の短所は、勝利の快感におぼれるところだ。勝って兜の緒を締めよ、と言葉では知っていても実行できないところだ。平家の滅亡、戦前の日本の破滅、バブルの崩壊、かつての自民党、最近の民主党の衰退もみな原因は自分の傲慢さを自覚できなかったからだ。また外国や日本のマスメディアが発言の一部を都合のいいように切り取って報道することにあまりにも無神経だったからだ。

 環境時報の提案した3つのステップは、中国にとって天に向かって唾を吐くようなものだ。中国政府が採用するとは思えない。が、もし採用したとしても日本政府は冷静に対処すべきだ。そしてやがてアフリカや西欧で起きるだろう、中国や朝鮮を対象にした、新しい「黄禍論」に巻き込まれないように注意したい。その為にも日本は謙虚な姿勢を見失わないことだ。