【団塊ひとり】橋下市長の「慰安婦」発言、政治家の発言はもっと慎重に

 「日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長第二次世界大戦中の旧日本軍による従軍慰安婦制度を「必要だった」などと発言した」と報道するが、橋下市長のツイッターでは「慰安婦制度については、当時の世界各国の軍が、軍人の性的欲求の解消策を講じていたのも事実」とあるだけだ。

 一般的な「慰安婦制度」と、特殊な意味を持たせる「旧日本軍による従軍慰安婦制度」とは意味が大きく異なる。橋下市長は「政府が(慰安婦を)拉致して暴行脅迫で無理やりそういう仕事につけさせたと言われている」が「そこは違いますよ」と明確に両者を区別している。

 稲田朋美・行革担当相は「「風俗業活用」発言については「意味が分からない」と語った。」(毎日新聞)と報道されているが、橋本市長はツイッターでは繰り返し「僕は、法律上認められている風俗業を活用しろと言ったんだ」と述べている。「風俗」に関する理解に大きな隔たりがある。

 橋下市長は法律に堪能でない人が「風俗業=売春業」と取り違えることを知って、あえて紛らわしい表現を使って挑発している。橋下市長が在日米軍に風俗業者の利用を求めたことに絡み、米国防総省のリトル報道官が「米軍が買春を拒否するのは「言うまでもない」と述べたことも風俗=売春と考えているからだ。が、この手法は日本以外では通用しない。

 日本において「法律上認められている風俗業」は「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」によって定義されている「客に飲食や接待などをし、又は一定の設備で遊興させる営業」のことだ。つまりキャバレー・ディスコ・クラブ・料亭・パチンコ店・ゲームセンターなどがそれに該当する。もちろん売春は含まれない。

 日本のクラブや料亭やパチンコの女性従業員は「日本国において法律で認められた風俗業」だ。が彼女たちは決して「売春婦」ではない。その意味で「日本国において法律で認められた風俗業を否定することは、それこそ、自由意思でその業を選んだ女性に対する差別だと思う」という橋下市長の主張は正しい。しかし、橋下市長の発言からそれをくみ取ることは困難だ。

 昔、まだ海外旅行が盛んでなかった頃日本人客は宿帳の「SEX」欄に「rarely 」とか「addict」とか「Four times a week」とか「inexperienced」とかカタコトの奇妙な英語で記入したらしい。「SEX」欄に記入すべきなのは「男」または「女」という単なる性別に過ぎないのに、日本人だけが特別な意味と勘違いして、「未経験」とか「大好き」とか「週に4回」とか頼まれもせぬのに自分のプライバシーをさらけ出していたようだ。実に面白い。実に愛すべき国民ではないか。

 「SEX」を単なる性別ではなく、性交と誤解することはある意味笑い話で済む。しかし、かつての朝日新聞の植村記者のように「慰安婦」を「(吉田清治のストーリーにそって)「女子挺身隊として強制連行された」と報道すると、笑い話ではすまなくなる。もちろん(意図的な?)「誤報」なのだがこの記事をきっかけに「慰安婦」の「強制連行説」が世界に広まったからだ。

 「女子挺身隊」は、第二次世界大戦中の1943年に創設された、14歳以上25歳以下の女性が市町村長・町内会・部落会・婦人団体等の協力により構成していた勤労奉仕団体(ウイキペディア)であり、慰安婦とは全く関係がない。が、朝日新聞の「誤報」により朝鮮人はこれを慰安婦と「混同」して国家の強制があった証拠として「信じて」しまった。

 それにしても日本の政治家はどうしてこれほど不用意な発言をするのだろう。橋下市長の発言は特殊な狭い世界ではもしかしたら容認されるのかも知れない。市長はそう判断したのかも知れない。しかし机の上に女性の水着写真を置いただけでセクハラ訴訟を起こされるアメリカの認識とはるかに隔たっている。あれほど女性の人権で日本を攻撃している韓国でさえ、報道官の女性への行為が露骨なセクハラとしてアメリカで非難を浴びている。韓国では見逃される行為でもアメリカでは許されないのだ。橋下市長は他山の石とすべきだ。

 過去にも日中国交回復時の田中総理の演説の例がある。あのとき田中首相は中国に多大な「迷惑」をおかけしたと発言した。とたん中国首脳の顔が一変した。中国人にとって「迷惑」は実に軽い言葉であったからだ。不用意な発言で相手の神経を逆なでして、無意味な摩擦を引き起こす。そのことによって国益が多大に損なわれる。二つの国家はますます敵対してゆく。それを意図したのなら確信犯だが、そうでないなら両者にとってこれほど不毛な軋轢はない。

 橋下市長が在日米軍に風俗業者の利用を求めたことも、「日本国において法律で認められた風俗業」という表現を使用し、自分の頭の中では「売春」を含まずと思っていても、世間はそうはとらない。売春容認と理解され女性を性欲のはけ口とみなしていると批判される。だから、リトル報道官が「米軍が買春を拒否するのは「言うまでもない」と答えるのだ。

 かつて「SEX」を狭い意味に捉えたように、今の日本では「風俗」という言葉に限定的な意味しか与えていない。そのことを理解している政治家はいるのだろうか。庶民は毎日パチンコにゆく自分の亭主を、「風俗」に入り浸りで困る、とは絶対に言わない。政治家はもう少し言葉に慎重であって欲しい。