【団塊ひとり】香川の「カガ」は 所変われば言葉の不思議

 選挙が近づいているせいか、新聞記事やTVのコメンテーターの露骨なネガティブキャンペーンが目立ってきた。ところが面白いことに政治家が待ってましたとばかり餌をばらまいて自ら餌食になっている。メディアにのせられるのか、思い上がっているのか。時にはマスメディアの意地悪な受け止め方もあるが、同情できない発言も多い。参院選は初めてネットを利用する選挙だ。今の時点でこれだけ問題が噴出し、これから更にネガティブキャンペーンが続出するかと思うと気が重い。

 最近の「明るい」話はやはりイタリアとの試合で香川選手が最優秀選手に選ばれたことだ。今回は敗戦チームから選ばれたことが印象深い。口惜しい敗戦の中で唯一明るい話題だ。ところで横道にそれるが香川選手の名前はイタリア人にはどのようにひびいているのか。

 カガワのカガはイタリア語では「大便をする」意味のCAGAと同じ発音だそうだ。日本人サポーターが大声でカガーワ、カガーワと叫んでいるのは、イタリア人にはさぞ面白かったに違いない。大便を我慢してまで応援するけなげなサポーター軍団と映ったのか、それとも・・・・。ともあれ日本人には想像もつかない受け取られ方を知るのも面白い。

 私はカルピスが好きだがCalpisは英語圏の人間には cow piss(牛の尿)と聞こえるそうだ。こうなるとうっかり「毎日飲んでいます」と言えない。もっとも健康法の一つに「尿を飲む」療法もあるらしいので、さすが長寿国の日本人と変に理解されたりするかも知れない。一方、形容詞kinkyは英語では「気まぐれな・性的に倒錯した」という意味があるので「キンキ・キッズ」はどのように理解されているのか心配になる。

 言葉は不思議なもので、外国人が日本語を使っているととたんに親愛の情がわいてくる。単なる知識であってもドイツ語の「ナーメ」が日本語の「名前」と同じであったり、「犬小屋」が英語でkennel(ケンネル)ということを知るだけでも楽しくなる。ほっほ、単純なおヒト。

 イラクに強引に攻め込んだブッシュ大統領は元テキサス州の知事。テキサスは「敵刺す」だ。なるほど、だから好戦的なのかと、ちょっと逸脱するのも面白い。だが、こじつけなくても思わず吹き出してしまう地名は世界各地に点在している。並べるだけでショートストーリーが成立する。少し挑戦。

 ニュージーランドには「オトコ谷」(Otoko Valley)がある。そこにはアメリカのボインシティ(Boyne City)から来た豊満な女性が一人のオトコを待っている。そのオトコの名前はキンタマーニ(Kintamaniインドネシアの地名)といって、「巨根橋」(鳥取県にある)の対岸に住んでいる。なんとなくいやらしい。

 女はオトコがなかなか来ないのでマダカシラ(Madakasira・インドの地名)と思っていると、件のオトコがエロマンガ(Erromangoバヌアツにある)を読みながらニヤニヤ歩いて来る。「あたし、こんなに待っているのに。だいいち女を待たせるなんて」女は、このスケベニンゲン(Scheveningenオランダの地名)と思ったが、恋しいオトコとのランチを楽しみに我慢する。

 ところがオトコが持ってきたのはカニカンだけ(北海道今金町カニカン岳)。思わず女は「なんじゃい」(南蛇井・群馬県富岡市)と思いヤリキレナイ気持ちになったが、(北海道由仁町ヤリキレナイ川)女の気持ちも知らずオトコは静かにオナラする。(オナラスカ・アメリカの地名)音の低いオナラほどクサイものはない。ああ、もうダメ。女は完全に切れてしまった。

 女はかに缶の最後を平らげると、キッパリとオトコに別れを告げる。男への最後の暴言。ボケ(Boké ギニアの地名)アホ(Ajoアメリカの地名)。去って行く女をただ呆然と見送る男の姿はマルデアホ(Mar de Ajo アルゼンチンの地名)だった。(了)

 自分たちが当たり前に使っている言葉や地名でも、外国の人間には全くちがう受け止め方をされる。まして政治の言葉は更にやっかいで危険だ。よく吟味しないで気軽に発言し、ツイッターやブログに載せ、指摘を受けると後で簡単に謝罪する。そのたびに信用が失われていくことに政治家や官僚は気づかないのだろうか。不思議でならない。