【団塊ひとり】大阪市長の橋下氏がサンフランシスコ市議会に公開書簡送付

 大阪市長の橋下氏がサンフランシスコ市議会に「非難決議は残念ながら、誤解に基づく」との公開書簡を送った。

 あれほどバッシングを受けながら、変に謝罪せずに持論を展開する橋下市長のタフさに感心する。戦後の日本の政治家で独善的な「大国」アメリカにあそこまで意見を述べた政治家はいない。「桜」のような潔さを「美徳」とする古い日本人の美意識からは外れるかも知れないが、新しい時代には必要な「しつこさ」と評価したい。

 公開書簡で橋下市長は様様な提言を行った。それらの詳細は、ネットでも公開されているのでそれに譲りたい。(http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/130822/waf13082223060032-n1.htm

 「公開書簡の目的」は、誤解に基づいた非難決議の撤回である。そのために橋下市長は「誤解」を招いた自らの在沖縄米軍基地関連発言を「撤回」する。

「誤解」とは「日本の法律で認められた風俗営業の利用」という表現が「日本の法律で認められ ていない売春・買春を勧めたとの誤報や合法なら女性の尊厳をおとしめてもよいのかという誤解」を招いたことを指している。「風俗営業の利用」という表現が、誤解や曲解を生む可能性が高いことは私も以前指摘したことがある。
   →http://d.hatena.ne.jp/tukudako7/20130516/1368673575
    http://d.hatena.ne.jp/tukudako7/20130529/1369831631

 その後、「慰安婦問題の正当化と誇張の両方を拒否し、歴史的検証を進める必要性」、正しい認識に至るための「提言」をしている。

 公開書簡は次のように表現している。

 旧日本兵慰安婦問題を相対化しようというような意図は毛頭ありませんが、戦場の性の問題を旧日本兵のみに特有の問題であったかのように扱い、日本だけを非難することによってこの問題を矮小化する限り、世界が直視しなければならない過去の過ちは正されず、今日においても根絶されていない兵士による女性の尊厳の蹂躙問題は解決されないでしょう。

 そうした事態を防ぐためにも、すぐにでもあらゆる戦場における性の問題の調査を、必要であれば共同調査を始めようではありませんか。日本側としては、慰安婦問題について歴史的真相究明を続けることは、歴史の真実を回避せず教訓として直視するという河野談話の精神に沿うことであり、歓迎します。そうした慰安婦問題のさらなる検討は、世界中の戦場においていまなお続く女性への性暴力の問題解決の第一歩になるでしょう。(「公開書簡」より)

「旧日本兵慰安婦問題を相対化しようというような意図」がないことを強調することは重要だ。
そしてこの複雑な問題に対処するときに求められるのは互いの謙虚さだ。

 例えば、「ヨハネによる福音書八章」には姦淫の場で捕まえられた女がイエスの前に引き立てられた話がある。律法学者やパリサイ人たちは「モーセの律法の中で、こういう女を石で打ち殺せと命じましたが、あなたはどう思いますか」とイエスに問いかける。

 パリサイ人や律法学者の目的は「イエスをためして、訴える口実を得るため」であった。「赦せ」といえば反律法の罪で、「殺せ」と言えばイエスの普段の説教との矛盾を指摘できるからだ。「姦淫の罪」を犯した女はこの場合パリサイ人や律法学者にとってイエスを糾弾するために都合の良い「駒」にすぎなかった。イエスの答は「あなたがたの中で罪のない者が、まずこの女に石を投げつけるがよい」だった。イエスはこうして、仕掛けられた罠から無事脱出できたのだ。

 強制の有無とは関係なく、日本人の一部が「慰安婦」に対して「罪」を犯したことは事実だ。この点では一切の弁解は卑怯だ。が、同じような罪を犯しているものが自分だけを正義として日本人だけを裁くことは明かな偽善で不公平な行為だ。この点で橋下市長が述べていることは正しい。ただ、これを強調しすぎると日本人は「罪」を認めないという大合唱になりかねない。その点で、公開書簡で「慰安婦問題のさらなる検討は、世界中の戦場においていまなお続く女性への性暴力の問題解決の第一歩になる」と主張したことは重要だ。日本を非難する国は、自分たちの「蛮行」も明らかにしなければならないからだ。すなわちアメリカは戦後日本国内に設置されたアメリカ軍相手の慰安所RAA(Brothel for U.S. forces)について、韓国はベトナムでの女性に対する「蛮行」とその後の謝罪と補償問題について、世界に説明する義務と責任が生じる。他の国も同様だ。

 私は橋下提言の最も重要な点は以下の文章に現れていると思う。
 
 「米国における慰安婦問題に関連する運動は、残念ながら、慰安婦問題への取り組みを含む日本の戦後の努力や成果を踏まえておらず、平和を志向し人権を尊重する今日の日本に対するフェアな評価から程遠いネガティブ・キャンペーンではないでしょうか。」さらに「兵士による女性の尊厳の蹂躙問題」を解決するために、「あらゆる戦場における性の問題の調査を、必要であれば共同調査を始めようではありませんか」と提言したことだ。国内的な視野から世界的な視野に広がる可能性がある。この視点は重要だ。これは今までの日本の政治家の誰も言えなかった言葉だ。

 「あらゆる戦場における性の問題」を対象にすることは、旧日本軍だけではなくアメリカ・中国・ロシア・韓国などの「兵士による女性の尊厳の蹂躙問題」を取り扱うことになる。「世界中の戦場においていまなお続く女性への性暴力の問題解決の第一歩になるでしょう。」という提言は的確だ。アメリカも韓国も、自分の国の恥部に向き合わねばならない。逃げるわけには行かない。自衛隊も当然評価の対象に晒される。

 特筆すべきは「自衛隊には性的搾取や虐待問題はない」「わが国の自衛隊は、派遣先で一度も人を殺したことはなく、また他国の国連要員によって引き起こされた性的搾取や虐待といった問題もありません。」と主張した点だ。これは韓国兵がベトナムでした蛮行と比較すれば際立つ美点だ。

 過去の反省は必要だ。が、韓国のように「現在」の自国の蛮行を隠すために日本の「過去」の行為を、まるで「現在」の行為のように誇張するという行為ほど醜いものはない。特に当時の「朝鮮系日本人慰安婦問題」をナチスユダヤ人に対する「ホロコースト」と同列に扱えと主張するに至っては、基本的な歴史的知識の欠如を通り越して、醜悪な人種差別を感じさせる。が、日本がそれを主張しても、韓国のプロバガンダしか知らない世界はなかなか納得しない。その点で橋下市長が提案する「戦勝国」も含む軍隊の女性への「現在」の性的搾取の問題を共同調査するという提案は画期的なものになろう。「共同調査」が公平に行われてゆけば、そこから真実が浮かび上がってくる。公開書簡でも触れられているが、すでにノルマンディー上陸作戦時における米兵の蛮行を記録したメアリー=ルイーズ=ロバーツ教授の研究も存在する。

 旧日本軍の「慰安婦問題」の調査と平行して、韓国軍のベトナムでの行状を調査して行くことをベトナムと共同して国連でも提唱して行くべきだと思う。