【団塊ひとり】中国と朝鮮 自国民を大量虐殺し自国民に正しい歴史を知らせない国

 北朝鮮の有名な芸術関係者十数人が先月、機関銃による公開銃殺刑に処せられたらしい。その中には金正恩とかつて交際していたとされる歌手の玄松月も含まれるそうだ。少し前にはミサイル発射失敗の責任を取らされて責任者が銃殺されるなど、北朝鮮はこの手の話題にはことかかない。私のような隙だらけの人間は、この国では1週間も生きられない。

 中国や朝鮮と日本の近代史を比較していると、際だって異なる点がある。それは中国や朝鮮では、権力者が簡単に自国民を虐殺している点だ。この前の日中戦争でも、国民党軍は日本軍の進撃を食い止めるため堤防を決壊させ20万人以上の人民を犠牲にしている。朝鮮戦争では北からの避難民の中に北朝鮮のスパイが紛れ込んでいるとの情報を得た韓国軍が、避難民に対して無差別に機関銃弾を浴びせている。

 少なくとも近代になってからは日本では両国のような自国民の大量虐殺は皆無だ。日本人の感覚ではにわかに信じることは出来ないが、文化大革命の前後で中国共産党政府に虐殺された国民の数は日本との戦争の死者をはるかに上回る。中国や朝鮮では国民の生命は羽毛よりも軽い。。

 韓国人はよく日本に「正しい歴史認識」を持てというが、日本人から見れば、半島の朝鮮人は、かつて自分たちが「日本人」であった歴史的事実を忘れているのではないかと思われてならない。彼等が糾弾する「日本人」の中に自分たちは入っていないと錯覚しているのではないか、と思える節が多々存在する。だから「日本人」の悪行の一部に自分たちも共通責任があるとは思っても見ないのだろう。彼等こそ正しい歴史認識が必要だ。

 一例を挙げると「親日」大統領のパク・クネの父親朴正煕は、かつて高木正雄という日本陸軍士官学校を卒業した日本人だった。彼だけではない。一定の数の「朝鮮人」が日本兵としてアジアで闘った。その事実を否定することは出来ない。

 だから、より厳密に歴史を記述しようと思えば、単に「日本人」と記述するのはあまりにも大雑把すぎる。例えば「大和系日本人」とか「中国系日本人・朝鮮系日本人」という表記が必要ではないか。そのことによって見えてくるものも多い。

 金時鐘氏が岩波のPR雑誌「図書」9月号で「残忍な拷問」と題して済州島での自己の「金輪際想いおこしたくない記憶」を語っている。

 その中で済州島の人民を拷問し大量に虐殺した韓国の警官について次のように記している。「これらの警官はすべからくと言っていいほど、植民地統治下で抗日愛国者を弾圧し迫害した特別高等警察出身者か、朝鮮総督府特高関連の警察官だった人たちでした」

特別高等警察は有名なものではナチスゲシュタポソビエトGPUKGB、韓国のKCIA、その他中国や北朝鮮を始め、多くの国が現在も保持している秘密警察だ。もちろん今の日本には存在しない。

 金時鐘氏の証言を借りれば、日本軍国主義下の特高にも「大和系日本人」と「朝鮮系日本人」の特高がいたことになる。すなわち「朝鮮系日本人」を拷問した「朝鮮系日本人」の特高がいたことになる。これを「日本」の特高が「朝鮮人」を拷問したと単純に表現してしまっては「真実」は伝わらない。

 同じように「慰安婦」も「大和系日本人」と「朝鮮系日本人」の慰安婦がいた。そしてこうした「慰安婦」を募集した人間にも「大和系日本人」と「朝鮮系日本人」という二種類の女衒がいた。2.26に関係する映画「動乱」で青年将校を演じた高倉健さんと、「朝鮮系日本人」の女衒(左とん平さん演じる朴烈全)によって満州に売られた吉永小百合さん演じる「大和系日本人」の慰安婦の姿は、当時の実情を良く現している。だから歴史に従うなら、いま韓国人が世界に流布させようと企んでいる「慰安婦像」は、すべて「朝鮮系日本人」の「慰安婦像」である。

 さて、私は20代の頃、いちど金時鐘氏と軽い雑談をしたことがある。いまでも覚えているが天皇や日の丸や李ラインについてぶしつけな質問した覚えがある。随分失礼な言いぐさをしたと思うが、氏は少しも嫌がらず黙って話を聞いてくれたことが印象的だった。

 当時の私は北も南も関係なく「朝鮮人」は皆同じとしてひとくくりに考えていたようだ。今から考えてみれば私は「南朝鮮人」の犯罪について、氏を詰問していたのだ。氏が反論しなかったのは、あまりに幼稚な私の論を無視したのだと当時は思っていたが、それだけではなかったのかも知れない。

 残念ながら日本と南朝鮮とはしばらく冷戦状態が続くだろう。争いが政府レベルではなく、国民の魂の部分に及んでしまったからだ。その責の大半は李明博竹島上陸という軽率で無礼な行為にある。そしてパク・クネが傷口を更に拡大してしまった。その結果、両政府とも先に妥協の姿勢を見せた方が国民の猛反対を受ける状態になってしまった。不幸なことだ。