【団塊ひとり】非常時にそなえるこころ 警察力の増強が必要だ

 防衛省によれば19日夜、沖縄県宮古島の東側の接続水域内を潜ったまま航行している潜水艦が確認されたそうだ。接続水域内の潜水航行は国際法違反ではないが、もし潜航したままで日本の領海に侵入した場合は、国境侵犯した「不審船」として自衛隊は「威嚇攻撃」もしくは本格的に「攻撃」すべきだ。国際法違反である限り某国政府は公然と批判することは出来ない。

 村上龍氏の小説「半島を出よ」は優れた小説だった。自衛隊の出動や安保条約の発動を無効にする形での日本侵略の可能性を見事に見せてくれた。最近は離島防衛の重要性が見直されるようになったが、もしかしたらこの小説の影響があったのかも知れない。

 小説は自衛隊の出動、安保条約の発動が無効になる危険な状態を描いている。法の抜け道をかいくぐって侵入する敵に対して今の自衛隊は適切な処置を下せない。映画「亡国のイージス」でも描かれた日本の法律の不備は早急になおさなければならない。

 警察と呼ぶにはあまりに強大であるが、軍隊と呼ぶにはあまりに制約に縛られている自衛隊は、今のままでは国家の危急存亡の秋に役に立つとは思えない。隊員に「被害」が出なければ動けない組織は、例えは悪いがストーカー被害が出なければ動かない警察と同じで、最悪の事態を防ぐことは出来ない。被害者が亡くなってからあわてて捜査をしても後の祭りだ。後手に回ればどうなるかはストーカー殺人が示している。

 自衛隊がどれほど滑稽な状態に置かれているかはその装備を見れば分かる。なんと自衛隊の「戦車」には普通乗用車と同様のウインカー(方向指示器)がついているのだ。もっとも、自衛隊法第114条で平時でもウインカーを免除されているのだが、それでもあえてつけているのは日本の一部マスコミなどが騒ぐからだ。緊急時には一切の束縛を解放して「敵」や状況に対応して行動しなければならないのに、日本の社会は自衛隊に過度な配慮を要求している。現実や想定外の事態に即した法改正が必要だ。戦闘時にいちいちウインカーを点滅させる軍隊がどこにあろう。自衛隊戦車のウインカー設置ほど平和ボケした国家を象徴しているものはない。

 自衛隊は有事や緊急事態に適切な対応が出来るプロ集団である。民間や警察や消防などが出来ないことを、自らの生命を代償に的確かつ安全に実行できるプロ集団だ。その活動を縛ることは、実は国民に不利益をもたらすことも多い。

 3.11で東北地方は大きな被害を被った。その中でも燃料不足が深刻だったたことはまだ記憶に新しい。ところがガソリンや軽油を一気に輸送しようとしても、国土交通省の省令で、人と燃料を同時に運ぶことは制限されていて、効果的な輸送は実行できなかった。今の日本の法律では緊急事態における「平時の法令」の制約を解除することが出来ない。結果として被災地が大きな不利益を被ることになる。これは理不尽ではないか。

 目の前におぼれている人がいる。ところが救助するためには、役所に救助の許可をもらわねばならない。それでは間に合わない。平時の法律をかざすことによって、みすみす助かる人を見殺しにする、これが今の日本だ。東北の復興がとどこおっているのも、この平時の法律に縛られている面も多い。有事の際に私権を制限することに臆病であってはならない。

 が、自衛隊が世界水準の「普通の軍隊」になる事さえ、今の日本では困難だ。もし仮に法律の隙間を抜いた侵略が仕掛けられても、今の自衛隊では適当な対応が困難だ。一刻も早く法律の改正が必要だが、それが長引くなら私はその空白を埋めるため、警察力の大幅な増強を提案したい。

 テロ対策として、警察が時々放映する映像を見て逆に不安になる国民は多いはずだ。国際的テロ制圧の訓練時に「刺又」が登場したときは、思わず吹き出した。緻密な訓練を受けた国際テロに江戸時代の道具が通用すると思っているのだろうか。アナクロニズムも甚だしい。

 自衛隊の活動が制限されている今、その補完は警察力の強化によるべきではないだろうか。中国の警官は自動小銃や機関砲等を保持している。今は警察組織内の特殊な組織にのみ携帯を許されている自動小銃などの携帯範囲を拡大してもよいのではないか。

 今は放水装置しか備えていない機動隊の装甲車両(特型警備車)も有事に備えて軍用装甲車に近い装備が必要だ。憲法改正がなかなか進まない中、日本の国を守るために、警察力の強化を考えることが必要だ。日本はすでに日本侵略を公言する外国勢力を多数抱え込んでいる国なのだから。

 将来、日本の港湾に中国などの工作兵が漁民に変装して、遭難や緊急避難を装って人道的配慮を求めて大量に来る可能性は否定できない。彼等は船底に隠していた武器を使用して、地方都市を制圧するかも知れない。まさしく「半島を出よ」と同じ状況の出現だ。

 その時中国政府は関与を否定するだろう。今の法律ではその時「暴徒」を止められるのは、自衛隊ではなくもちろん米軍でもなく、日本の警察しかない。起こりえる可能性を「想定外」として放置しておいてはいけない。中国や韓国の日本に対する最近の異常な発言は何かが起きる予兆と考えるべきだ。国家の運命を「すべては想定外だった」、という言葉で片付けて良いはずがない。