【団塊ひとり】北朝鮮の「遺骨ビジネス」・・・・「約束」を守る習慣のない国との危険な取引

北朝鮮との交渉が始まった。良い意味でも悪い意味でも安倍政権には大きな転機になるだろう。上手く行けば安倍政権の政権基盤は盤石になるだろうが、失敗すれば支持率は急落し政権を失うだろう。

 順調良く支持率を伸ばしてきた安倍政権が最近、その支持率が落ちている。その理由を自民党萩生田光一総裁特別補佐は記者団に、集団的自衛権について「ネガティブな報道をされたのが影響した」と語った(読売新聞報道)が、それだけではない。

 まずせっかく「河野談話」の検証を行いながら、「河野談話を否定せず、継承」という説明に終わったことに対する失望がある。従前通り河野談話を「継承する」のなら、何のための「検証」だったのか意味が分からない。「検証」は韓国の反発を生んだだけで、以前より事態は悪化してしまった。検証効果によって、「河野談話」が事実ではなく、政治的産物だったことが明らかになったが、今のままではそれは世界に伝わらない。日本は今まで通り「犯罪国家」の汚名を着せられたままだ。東京都議会のお粗末な「セクハラやじ」があれほど世界に広まったのも、日本=性犯罪大国という人種差別に近い偏見が存在しているからだ。「河野談話」見直しを阻止しようとする勢力が、必要以上に世界に宣伝したとの見方も可能だ。もっともその原因を作ったのは日本人自身だから、悪意のある攻撃にも有効な反論をすることも出来ない。

 「河野談話」に対する「政治性」を目に見える形で証明し世界に理解してもらわない限り、日本人に対する評価は変わらないし、政権支持率の低下は避けられない。政権支持率の低下は「検証」に対する納得した説明が行われていないことに対する国民の批判だ。

 続いて集団的自衛権以上に政権の命運を決めるものに、拉致被害者の奪還問題がある。「拉致」は国家の主権を侵害する重大な犯罪であるのに、一部のマスコミは拉致被害者の返還を「人権問題」にすり替えてしまっている。そして政府もそれに対して鋭い批判をしていない。明かな政治的な失点だ。

 そして何よりも国民が危惧しているのは北朝鮮の姿勢だ。日本政府が交渉の相手にしているのは「約束」はするが「約束を守らない」という習慣を持つ民族だ。実際に今まで何度も煮え湯を飲まされている。また同じ結果になるのではないかという心配に政府は答えていない。

 結果が出ていないのにすでに制裁の一部を解除したことに対して、3日の「時事通信」は制裁解除は国民への背信として次のような批判記事を載せている。

  北朝鮮への制裁措置を一部解除するとの政府決定を受け、民間団体「特定失踪者問題調査会」の 荒木和博代表は3日、東京都内で記者会見し、「北朝鮮は何度も約束を破ってきた。被害者帰国の 結果は出ておらず、制裁解除は極めて遺憾だ」と批判した。
  荒木代表は、菅義偉官房長官が同日の会見で生存者リストの存在を否定したことについて、「リ ストがないなら、特別調査委員会の設置だけで制裁解除したことになる。国民への背信だ」と指摘 した。
  調査委メンバーに金正恩第1書記直轄で秘密警察に当たる「国家安全保衛部」の幹部らが入っ たことについては、「何者か分からないし、今後粛正がないとも限らない」と言及。「何度も約束を 破ってきた国だ。出てくる話が全てうそでもおかしくない」と警戒感を示した。
  また、政府が2002年に拉致被害者家族に情報を公開せず混乱を招いた問題を挙げ、「政府は都 合の悪い情報を隠さず、合意文書を原文のまま国民に提示すべきだ」と注文した。(時事通信) 

 更に懸念するのは今回の再調査の対象が拉致被害者だけではなく、特定失踪者・残留日本人・日本人妻、更に北朝鮮でなくなったとされる「日本人の遺骨」返還まで含まれていることだ。

 日本人妻は自らの意志で朝鮮人と結婚し、北朝鮮を「天国」と信じて日本を捨て北朝鮮を選択し、国籍も朝鮮人になっている女性たちだ。自らの意志とは無関係に強制的に北朝鮮に「拉致」された拉致被害者と同じ土俵で判断することは出来ない。彼等に「補償」など必要ない。

 また「残留日本人」も、もちろん生きる為に日本人であることを隠して生きてきた人もいるかも知れない。しかし、自らの意志で北朝鮮にとどまっている人たちや北朝鮮に渡った人たちもいるはずだ。彼等はいつでも工作員になり得る危険な存在であるかも知れないので、これまた「拉致被害者」と同列に扱うことは出来ない。

 そして何より危険なのは北朝鮮が「遺骨ビジネス」を始めたことである。そして自民党政権がそれに乗って多額の金銭を北朝鮮に渡すことだ。その可能性は高い。

 小泉政権時代に何人かの拉致被害者が日本に戻ってきた。まともな「日本人」なら、それを北朝鮮の「人道的配慮」と思う者はいないはずだ。そして誰もが裏で多額の金銭(国民の血税)が流れていたと信じているはずだ。

 今回はさすがに露骨な形での金銭的授受は困難だろう。そこで人道的という名目の下で合法的に「身代金」を支払えるようにしたシステムが「遺骨ビジネス」だ。すでにアメリカは朝鮮戦争時におけるアメリカ兵の遺体を一体200万円以上の金を支払って取り戻している。北朝鮮がそのうま味を忘れるはずがない。上手く行けば戦後補償とは別に数百億円の金が転がり込む。だが、「遺骨」が日本人のものである保証などどこにもないのだ。

 私が心配するのは「遺骨ビジネス」で支払った金が、日本に対する戦術ミサイルへと変貌することだけではない。前回、死亡と断定した報告書を提出したものの、日本側のDNA検査で見破られてしまった経験を持つ北朝鮮が、今度は日本に返しては都合の悪い(すなわち秘密を知りすぎた)拉致被害者を殺害し、あるいは殺害せぬまでも身体の一部を切断して「遺骨」として提出する危険が高まっていることだ。そうすれば北は「死亡説」を訂正する必要が無くなってしまう。そしてその時点で「拉致問題」は全ては闇に葬られてしまう。

 その危険性を政府は想定しているのだろうか。今はあまりにも北朝鮮の甘言に乗っているように見える。もし一人でも死亡の報告があれば、それは自民党政府だけではなく北朝鮮に対しても致命的なダメージになることを両国政府は理解出来ているのだろうか。