【団塊ひとり】政府支持率上昇の背景・・ISIL報道と国民の意識

 ISILに対する、政府と野党の間の国会論戦がどうもかみ合わない。例えば共産党の小池氏が、首相のカイロでの演説を批判して、「テロに屈することと慎重に言葉を選ぶことは違う」と追求すると、首相は「テロリストに過度な気配りをする必要は全くない」と反論した。

 さらに首相は「小池氏の質問はまるで、ISIL(イスラム国)を批判してはならないという印象を受ける」と追い打ちをかけて、両者の「討論」は全くかみ合わない。世論の反応は首相を支持していて、その影響か野党の追及は精彩を欠いている。

 政治的な立場や様々な背景を排除して、「切り取られた発言」だけをみると、首相も小池氏も当たり前のことを述べているに過ぎない。しかし両者には、お互いの発言を受け止める姿勢は全く見られない。たぶん両者の「こころ」は互いに不信感で裏打ちされているからだろう。

 首相と共産党との関係は、水と油のようなもので互いに大きな不信感が存在して、歩み寄りは不可能に見える。だから互いの「発言」は「相互発言」に終始して、「対話」に発展することはない。これは日本国にとっては不幸なことだ。

 首相は先月エジプトで「イスラム国と戦う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援を約束する」と表明した。その3日後ISILは「日本政府はイスラム国に対する戦いに2億ドルを支払うという愚かな選択をした」との声明を出し、日本人の人質事件が「表面化」した。

 もし首相が「イスラム国」と名指しせずに、「テロ集団と戦う周辺各国に、総額で・・」と切り出していたらどうだろう。もしかしたらISILはあそこまで強硬な手段をとらなかったかもしれない。が、それはあくまでISILが理性的な存在だと楽観的に考えた場合だ。

 首相は軍事的な支援を表明したわけではなく、人道的な援助を表明したに過ぎない。が、ISILにとって、そんなことは重要な意味を持たない。「女性に教育を」という日本人にとっては当たり前のことを主張したMalala Yousafzai(マララ)さんすらテロリストの殺害対象になる。ISILに対しては「話せばわかる」式の楽観論はむしろ危険だ。

 人質交渉を進めるISILが、すでにヨルダンのパイロットを非人間的な方法で殺害していた事実も明らかになっている。二人の日本人の人質の映像が公開されたとき、実はすでに湯川氏は殺害されていた可能性もある。ISILを信頼することは危険だ。ISILの狡猾な交渉に振り回されてはならない。

 今回のマスコミ報道で私は朝日新聞・TV朝日・TBSの報道を注視している。なぜなら、彼らはいまの日本で最もISILに近い存在だと思うからだ。が、今回は思ったほど、政府の足を引っ張る報道は少ない。かつて、報道内容をオウムに漏らし坂本弁護士一家殺害の原因を作ったTBSのバラエティ番組は、最も注意すべきもの一つだ。が、昼間の番組「昼おび」も、最近はきわめて抑制的である。

 世論調査においても、マスコミによって程度の差はあるけれど、おおむね政府の人質解放に対する対応を国民の多くが支持し、政府支持率も上昇している。あれほど安倍首相に対してネガティブな報道が続いた中での日本国民の選択だ。反日的な政党やマスコミに影響されない、健全な判断力を日本国民が持っていることの証明だ。