【団塊ひとり】安倍首相談話 戦後70年 戦前の日本と戦後の中国

 中国が戦後70周年に向けての安倍首相談話を牽制している。またその意向を受けた一部の新聞社も、盛んに政府攻撃を強めている。

 中国のような全体主義国家について70年という期間は象徴的だ。共産主義の本家ソビエトの社会体制が、ほぼ70年で崩壊しているからである。いずれも外の世界の思想が閉鎖社会体制の内部崩壊を早めている。特にネットが発達し、ある程度国家間の往来が自由になった現在では、いくら情報を支配しようとしても限界がある。中国は崩壊することはないとしても、共産党の独裁体制に変化が生じる可能性は高い。中国にもゴルバチョフは存在している可能性がある。

 中国政府は自分たちの正統性を主張するために、いままで以上の反日宣伝活動を強めると思われる。が、その主張の多くは過去の日本のあり方に集中し、戦後の日本に全く触れないといういびつなものだ。過去を正視し、その反省をすることは重要だが、それは日本だけが背負わされた責務ではない。中国も同時に過去に誠実に向き合う必要がある。過去を利用し、日本の未来を封殺し自己の勢力を広げようとする中国の侵略的な態度は、とうてい認めることは出来ない。

 戦後70年の式典で中国が必ず出すであろういわゆる「南京虐殺」の問題。「虐殺」期間は東京裁判では約6週間、その他4ヶ月説など、期間に対しても「定説」はない。が、仮に4ヶ月としたら、その長い間共産党の軍隊は何をしていたのか。なぜ「虐殺」を放置していたのか。その理由を中国人民にどのように説明しているのか。まさか逃げ回っていたのだろうか。

 「事実」は一つでも「解釈」はさまざまだ。日本のアジアへの「進出」が植民地からの独立を促したことは事実であっても、その解釈はイデオロギーに左右されるから、安倍談話では下手な弁解をすべきではない。むしろ「過去の反省」のもとに、未だにチベットウイグルを「占領」している中国に「日本のまね」をすべきではないと諭すことだ。

 また、原爆投下や一般市民に対する無差別爆撃という「平和への罪」「人類の罪」を犯したアメリカが、自己の行為を正当化するために日本を悪逆非道の国民と主張する可能性もある。そして、中国に荷担して、南京で民間人を「虐殺」したと日本を責める可能性もある。すでにブラッドピットの妻であるジョイナーは日本人がアメリカ人捕虜の人肉を食っていたとする映画を中国に売り込んでいる。が、彼女はアメリカ軍が日本人の頭骨をアクセサリーにしていたことは不問である。

 が、過去の日本軍の「蛮行」はそれが真実であれば認める勇気がいる。が、それを今更なぜ、という気持ちは残る。アメリカ人がそれを言うなら、イラクアフガニスタンなどで「誤爆」で民間人を大量に「虐殺」している行為と、どう違うのかジョイナーは説明すべきだ。もし「東京裁判方式」で現在のアメリカや中国やロシアの戦闘行為を裁けば、多くの軍人が犯罪の対象になるはずだ。

 ベトナム戦争ではアメリカ軍は一人でも「ベトコン」が発見されると報復として、一村すべてを破壊した。これはイラクでも同じだ。たった一人の敵のために、数百人の無実の人間が殺され家を追われる。これは犯罪ではないのか。

 3月16日は、1968年にアメリカ軍がベトナムで非武装のソンミ村の住民504人を虐殺した日だ。
被害者の中には妊婦や乳幼児が含まれていた。さらに付近の村でも大量の殺戮が行われていた。
ところが実行者14人は一人が終身刑になっただけで、後は無罪になっている。その終身刑の軍人もしばらくして釈放されている。「東京裁判」方式の「「裁判」ならありえないことだ。

 南京事件に対する審判では、第6師団長谷寿夫、中支那方面軍司令官松井石根、その他が死刑を宣告されている。ソンミ村裁判と比べて明らかに公平を欠く裁断だ。が、今それを主張すると「歴史修正主義」と糾弾されるのだろう。

 中国やロシアと違って、アメリカは侵略を防ぐ「正義」の戦争をしていると主張する。が、かつての友人タリバンがいまや反米の急先鋒だ。なぜアメリカは嫌われるのか。先日テロリストに殺害された後藤健二氏の著書にその答えがあるように思われる。

 後藤氏はアメリカ軍の「誤爆」によって息子を殺された母親に質問している。

誤爆をしたアメリカを恨んでいますか?」

 母親は答える。「誰にも文句を言うつもりはありません。アメリカに対しても、誰にも・・・・ただ、アメリカにはわたしたちを助けてほしい。わたしの息子はまちがって落とされた爆弾で殺されたんです。そのことを認めてわたしたちを助けないというのなら、わたしはけっして彼らを許しません!・・・・」(「もしも学校に行けたなら」より)

 彼女が受けた補償は日本円でわずか700円だった。世界一の金持ち国の補償としてあまりにも少ないではないか。もしこれがアメリカ国内での「事故」であったなら、数億の補償でも被害者は納得しないだろう。

 後藤氏は事実を記しただけだが、アメリカがなぜ嫌われるか、どのような国なのか、その理由がよくわかる文章だったと思う。

 安倍首相談話は、過去だけではなく現在と未来を踏まえたものであってほしい。そして「侵略」を経験した「先輩」として、侵略的な中国に忠告と助言を与えてほしい。