【団塊ひとり】警察の誤認逮捕はなぜ起きるのか。

 大阪府警高槻署員が今年4月、無関係の男性を府迷惑防止条例違反(痴漢)容疑で誤って現行犯逮捕していた。警察の「誤認逮捕」が止まらない。

【新聞記事】

 大阪府警高槻署が4月、路上で痴漢被害にあった娘とともに犯人捜しをしていた母親の申告をもとに、高槻市内に住む男性を誤って府迷惑防止条例違反容疑で現行犯逮捕していたことが8日、府警への取材で分かった。同署はすぐに誤認逮捕に気付き、約30分後に男性を釈放し、謝罪した。

 同署によると、4月17日夕方、高槻市内の路上で、少女が背後から近づいてきた男にスカートをめくられた。男はすぐに逃走。少女はいったん帰宅し、母親とともに男を探した。

 まもなく、少女は近くの公園でジョギング中の男性を犯人と思い、母親が近くをパトカーで通りかかった署員2人に「あの男に娘が痴漢をされた」と訴えた。職務質問を受けた男性は犯行を否認したが、少女が「この人で間違いない」と話したため、署員は午後6時35分、同条例違反容疑で男性を現行犯逮捕した。

 ところが、直後の調べで少女が被害に遭った後に帰宅し、母親も直接犯行を目撃していないなど、現行犯が成立しないことが判明。このため、逮捕から約35分後の午後7時10分に男性を釈放したという。

 さらにその後の捜査で、現場近くの防犯カメラに、逮捕された男性とは別の男が少女の背後をつけ、その後逆方向に走り去る姿が映っていたことが分かったという。同署は「本来は公表すべき事案だったが、男性や被害者の女性から強い要望があり、公表を控えた。今後、このようなことがないよう、指導を徹底する」としている。(産経新聞

 なぜこれほど誤認逮捕が続くのか。理由は警察の「成果主義」と「証言偏重」にある。特に客観的な証拠の裏付けのない証言は「偽証」または「誤認」の可能性もあることが認識出来ていない。

 昔見た「ヒチコック劇場」の一編を思い出した。「レイプ」された妻の復讐を果たそうとする夫が、妻を車に乗せて犯人を探す。そして妻が指摘した男を絞め殺す。ところが、その後また妻が次々と別の男を指さして「あいつが犯人」と叫び、夫が愕然とするという内容だったと思う。夫は犯人の顔を見ていない。夫の行動の源は妻への愛情だ。それが純粋であればあるほど、犯人への憎しみは増加し夫の判断力はその分盲目になって行く。感情に支配された夫は、十分な検討も経ないまま「無実」の人間を殺害してしまった。憎しみに支配された人間はだれでもこの陥穽に陥る可能性がある。

 客観的な証拠がないまま、一方の証言のみで判断することは危険だ。特に「証言」が悪意のある「偽証」である場合は、危険を通り越してすでに犯罪だ。その認識が告発者や警察には少ないのではないか。悪質な「証言者」には強い罰則を与える必要がある。冤罪になった「痴漢」容疑の多くは、被害者役、証言者役が組んで示談金をせしめる事が目的であった場合が多い。が、警察はそれを見抜く努力をしない。悪徳警官が一枚かんでいた場合は、「被害者」は無実の晴らしようがない。

 高槻の誤認逮捕の場合、もし防犯カメラの映像がなかったら、たまたまジョギングをしていて「犯人」にされた人の運命はとてつもない悲劇になっていたかも知れない。現在の日本警察の「習慣」では痴漢の「被害者」の証言が一方的に重要視され、「加害者」とされた人の「証言」は完全に無視される。そして一度疑いをかけられると、「自供」するまで何日も拘留される。その間無能で怠惰な警察は「犯人」の自供を待つだけで、まともな「うらづけ捜査」を怠る。やがて「容疑者」は長期間の拘留に根負けして「自供」させられ「犯人」にさせられる。「自白」を引き出した警官は表彰される。

 仮に真面目な警察官の努力によって「無罪」が証明されても、長期間拘留されている間に「犯人」とされた人は、職を失い、時には家族も失う。それでも怠惰な警察官の名前は公表されず、多くは処分すらされない。無責任な告発者も、罪の意識を持たず知らぬ顔で生活する。これでは「石抱」の拷問が無いだけで江戸時代の取り調べ方法と変わりが無い。

 高槻の告発者の母親は、その場にはいず「犯人」の顔すら見ていないという無責任さだ。また警官も容疑者を「現行犯逮捕」するのなら、なぜそんな基本的なことを警官は確認しなかったのだろう。

 この「事件」が今まで公表されなかったのはなぜか。そして今頃公表されたのはなぜか。この事件の処理は、従来通りうやむやになるのか。「警官」も告発した「母子」もおとがめ無しだろうか。それとも事実関係を明確にし、公表することによって警察が再生する契機となるのか。このままでは同じ事件が再発する。今は警察の危機だ。

 告発者の被害者意識は理解できないでもない。しかし、自分の無責任な告発が、無実の人の一生を台無しにすることも考えるべきだ。

 一方的な証言のみを採用し、客観的な確認を怠った警官は処分されるべきだ。又、いいかげんな告発をした無責任な母子は謝罪はもちろん、賠償金を男性に支払うべきだ。そして警察は詳細を公表すべきだ。そうしなければ、また同じ事が繰り返される。

 警察が生まれ変わる為には、現在の「岡っ引き」状態から、近代的な「警察」に進化する努力を怠らないことだ。そうしないと同じ事が何度も繰り返されてしまう。

PS
 東スポWeb( 8月9日(金)11時17分配信 )が「現役グラドル「レイプ未遂」被害で警察の信じられない“怠慢”に憤り」と報じている。http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130809-00000004-tospoweb-ent

 もし、真実なら警察の怠慢は明らかだ。一方では誤認逮捕。片方では怠慢対応。このどうしようもない負の連鎖を打ち破るためには、マスコミを中心とした厳しい批判しかない。が、多くのマスコミは警察関係の報道には腰が引けてしまっている。報復が怖いからだ。情けない。